2013 Fiscal Year Research-status Report
急速眼球運動におけるサル大脳半球間競合を担う神経経路の同定:光遺伝学的fMRI
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25750399
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
足立 雄哉 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40625646)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 大脳皮質 / マカクサル / fMRI / 皮質不活性化 / functional connectivity / 領野間ネットワーク / 光遺伝学 |
Research Abstract |
本研究の目的は、マカクサル前頭眼野を局所不活性化することで眼球運動課題において引き起こされることが知られている行動変化が、不活性化により影響を受ける多数の神経経路のうちどの経路の変化に起因しているのかを同定することである。大脳局所不活化時には、操作を施した部位の神経活動が抑制されるだけでなく、神経軸索投射を通じてその影響が多くの脳領野に及ぶと予想される。平成二十五年度は、弓状溝前壁の局所不活化の全脳への影響について、functional MRI(fMRI)実験およびfunctional connectivity(機能的結合性)解析を用いて基本的な知見を得ることを目的とした。そのために、麻酔下のマカクサルにおいてMRI装置内で弓状溝前壁にGABAA作動薬ムシモルによる可逆的不活性化を施し、それによる脳領野間機能的結合の変化をfMRIにより計測する実験を行った。その結果、施した不活性化は局所的なものであるにもかかわらず、機能的結合性の変化は、不活化領域がもつ解剖学的結合に対応する箇所にとどまらず、大脳の広域にわたる領野間において同定された。しかもこれらの変化は不活化領域と各脳領野との平常時の機能的結合と関係することが分かった。また与えた操作はGABAA作動薬による神経活動の抑制であるにもかかわらず、同定された機能的結合性の変化は増強・抑制の両方向の変化が確認された。この結果により弓状溝前壁の抑制から行動変化へとつながる中間過程としての脳領野間結合変化について知見を得ることができた。今後この結果についてさらに詳細な解析の上、対外発表を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、大脳眼球運動関連領野の不活性化に伴い行動に引き起こされる変化が、どの領野間神経経路の欠落に起因するのかを特定することを目指すものであるが、その第一段階として本年度に計画されていたのは、弓状溝前壁の局所的不活化によって全脳にわたる脳領野間機能的結合がどのように変化するかについて基本的な知見を得ることであった。大脳において神経投射が非常に複雑なネットワークを形成していることや、機能的結合が単に解剖学的結合とは一致するわけではないという過去の研究から、局所的な不活性化が全脳領域の間の機能的結合に与える影響は予想・推定が非常に困難であるため、不活性化から行動変化が引き起こされる中間段階としての脳領野間機能的結合性の変化に関する知見を得るうえで、また本研究において今後行動変化に因果的にかかわる神経経路を探索するうえで、この第一段階の研究は非常に重要であると考えている。本年度はこの第一段階のデータの収集と解析の結果基本的な知見を得ることができ、本研究は順調に進行している。年度末現在さらに詳細な解析を加え、この研究成果について対外発表を行う準備を進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成二十五年度に引き続き、GABA作動薬による弓状溝前壁の局所不活化に伴う全脳の領野間機能的結合性の変化についてさらに詳細な解析を行い、対外発表としてまとめる。今後光遺伝学的手法のマカクサル大脳の関心領域における有効性を検証する予備実験ならびにサルの行動課題訓練を進行して以上の方法論の併用実験を目指す。本研究のこれまでの結果により、弓状溝前壁の局所不活化によって大脳の領野間機能結合は全脳の広範囲にわたって影響を受けることが分かったが、その中で行動変化に因果的に影響を与えている現象を探索していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成二十六年度以降に実験に使用する予定である動物(ニホンザル)を平成二十五年度に購入する予定にしていたが、購入を次年度以降に行うことにした。そのほか所属研究室で購入していた機材・試薬を使用するなど今年度の研究を効率的に推進した。また次年度以降に予定される外部発表の機会に必要な費用としてまわすこととした。 平成二十五年度に購入する予定としていた、今後実験に使用する動物(ニホンザル)を、次年度以降に購入する計画にしている。また、次年度以降の請求額と合わせ、計画している実験に必要な機材・試薬・飼料の購入費用ならびに、平成二十五年度に得た結果の外部発表に伴う費用として使用する予定である。
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Research Products
(5 results)