2013 Fiscal Year Research-status Report
嗅覚神経系特異的な機能阻害マウスを用いた、社会性行動を制御する神経基盤の解明
Project/Area Number |
25750402
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | 公益財団法人大阪バイオサイエンス研究所 |
Principal Investigator |
松尾 朋彦 公益財団法人大阪バイオサイエンス研究所, 神経機能学部門, 研究員 (90641754)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 神経科学 |
Research Abstract |
平成25年度は、以下の3点の研究を行った。 (1)特定の嗅覚神経系を選択的に機能阻害したマウスの作製と社会性行動の解析。 (2)各嗅覚神経系の下流で、社会性行動を制御する脳神経細胞群の同定。 (3)(2)で同定された脳神経細胞の機能解析。 (1)特定の嗅覚神経系群(主嗅覚系背側領域、主嗅覚系腹側領域、鋤鼻系)を特異的に機能阻害したマウスを作製するために、Omacs-Cre、OCAM-Creマウスと、嗅細胞の活性化に必須であるCNGA2のコンディショナルノックアウトマウスを掛け合わせた。鋤鼻系の機能阻害には外科的手術により鋤鼻器を除去した。この結果、主嗅覚系背側領域がマウスの社会性行動を、性別に関わらず、鋤鼻系非依存的に直接的に制御していることを明らかにした。主嗅覚系腹側領域の解析については、OCAM-CreとCNGA2のコンディショナルノックアウトマウスを掛け合わせたマウスでは背側領域の機能も阻害されたため、現在OCAM以外のプロモーターを用いて、主嗅覚系腹側領域の機能阻害を試みている。(2)神経細胞の活性化マーカーであるc-fosの発現を指標とした全脳マッピングにより、これまで社会性行動との関連が報告されていなかった脳領域が同定されてきた。(3)上記(2)で同定された領域を局所破壊したところ、社会性行動に異常が見られ、この領域が主嗅覚系背側領域の下流で機能していることが強く示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
主嗅覚系背側領域を特異的に機能阻害したマウスを作製し、このマウスが一般的な嗅覚および鋤鼻系の機能が正常であることを確認した。さらに、行動解析によって、主嗅覚系背側領域が直接制御する複数の社会性行動を明らかにすることができた。また、c-fosを用いた全脳マッピングにより、主嗅覚系背側領域と鋤鼻系からの情報が、脳内の扁桃体および視床下部で統合されていること、および、主嗅覚系背側領域依存的に活性化される複数の脳領域の同定に成功した。ここで同定された領域の機能解析は、当初平成26年度に計画していたが、一部すでに平成25年度に行うことができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
c-fosマッピングにより同定された、主嗅覚系背側領域の下流で機能することが期待される領域が本当に社会性行動に関わっているのかを引き続き検証していく。このため、脳の局所破壊、薬理阻害およびDesigner Receptors Exclusively Activated by Designer Drugs法を組み合わせて行動解析を行っていく。 また、OCAM以外のプロモーターによってCreが主嗅覚系腹側領域に発現しているマウスを用いて、腹側領域の社会性行動における機能解析を行い、各嗅覚神経系による社会性行動の制御機構を包括的に解明していく。
|