2014 Fiscal Year Research-status Report
近代博覧会における先住民族「人間展示」に関する歴史研究:その転用と変遷に着目して
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25760010
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
宮下 敬志 立命館大学, 文学部, 助教 (50509346)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アメリカ史 / 世界史 / 博覧会 / 西洋史 / アメリカ合衆国 / 文化史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の研究期間内の最終目的は「欧州・米国・日本の博覧会における先住民展示のうち、生身の先住民の「人間展示」について、その誕生と地域横断的な転用過程を明らかにすること」である。 2014年度の前期(4月-9月)は、アメリカ合衆国で開催され、諸国が出展した万国博覧会の調査を主に行った。具体的には、「人間展示」について、同時代において大がかりな展示が行われたといえるセントルイス万国博覧会の調査を主に行った。具体的には、政府機関などの公的資料や当時の観光ガイド・日記資料などを収集・分析した。その結果、先住民の子供たちの「生身の展示」の実態や、それについての政府見解、来場者の反応などについて、新しい知見を得た。また、アメリカ先住民の人々の博覧会へのかかわりや、フィリピン植民地やアフリカから連れてこられた人々の「人間展示」のありさまについても分析できた。 後期(10月から3月)は、アメリカ合衆国がヨーロッパにおいて参加したいくつかの博覧会における先住民族関連の展示について、資料状況の調査及び確認と分析を行った。これらについては資料状況が限られていたために、「人間展示」については調査途中である。しかし、アメリカ先住民関係の出展品リストなどの資料を得て、それを分析をすることができた。今後は、それらの資料を用いながら、「人間展示」手法と「事物展示」手法がどのように相互的な関係を持っていたのかについて、また、それらが各国の博覧会でどのように利用・転用されていったのかについて、世界史的な視野から引き続き分析していくつもりである。 なお、年間を通して、これらに並行して、フランスやイギリスが行った博覧会における、開催国が行った人間展示に関する資料の収集や、電子的なテキスト分析調査も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画よりも、アメリカ合衆国に関して分析を要する資料が多くなっている。そのために、アメリカに関する部分の分析に予想よりも時間をかける必要があった。しかし、国内外の分析対象とした万国博覧会の分析は並行して進めており、おおむね順調にこなしている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、日本で入手ができなかった万国博覧会資料について、資料収集のため海外渡航を予定する。また、万国博覧会における現存展示品(先住民関連資料)についても、実物資料の現地調査も並行して行っていく。並行して、20世紀半ば以降の博覧会と、日本で開催された諸博覧会について分析をする。その上で、これらの成果を秋に立命館史学会にて報告し、その上で、論文としての公表を準備していく。
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Causes of Carryover |
2014年度には、国内外での図書調査を予定していた。しかし、調査に必要な一次資料のリプリント(マイクロ)を一部を学内の競争的資金で入手できた。手に入れた一部資料の分析を優先したために、出張して残りの資料の分析まで至らなかった。また、計画していた海外渡航(アメリカ)については、入手済みの資料の収集と分析を終えてから、不可欠な文献資料・論文に用いる図版資料などを、2015年度にまとめて収集・調査する方が効率的と判断した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
アメリカへの資料調査出張(ロサンゼルス・セントルイス・シカゴ・ニューヨーク・ワシントン・フィラデルフィア等)を予定する。加えて、日本で開催された内国博覧会に関する調査のため、北海道、東京等)への出張を同時に予定する。その他、成果を取りまとめるために必要な物品(書籍・マイクロ資料・電子機器)の入手に主に用いる予定である。
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