2014 Fiscal Year Research-status Report
ライプニッツの数理哲学における数学的存在の形而上学的位置づけの解明
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25770005
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
池田 真治 富山大学, 人文学部, 准教授 (70634012)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | モナドロジー / 連続体 / 数学 / 形而上学 / 原子論 / 実体的紐帯 / 虚量 / 数学的存在 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、主にライプニッツのモナドロジーの形成をめぐって、数学と形而上学の関係の観点から研究した。また、ライプニッツの数学的存在の位置づけをめぐって、虚量の問題を取り上げた。 具体的な研究テーマは以下の通りである。(1) ライプニッツの原子論との対決からみたモナド概念の形成、(2) 連続体におけるモナドの位置の問題──後期ライプニッツにおける数学と形而上学の関係、(3) 虚量の本性に関するライプニッツの考察──ライプニッツのデカルト派代数の批判を通じて。 明らかになった主要な結果は次である。 (1)及び(2) ライプニッツは、その学問方法論において数学的アナロジーを用いる。しかし、物体(連続体)の理論において、数学的アナロジーが成り立たない問題があり、その最大の問題として「連続体の合成の迷宮」があった。ライプニッツは、初期の原子論の受容、中期の実体形相説の復活、そして後期のモナド論において、数学的領域と自然学的領域の関係、言い換えれば精神と物体的自然の関係をめぐって考察したが、そこに通底するライプニッツの哲学的信念として、運動を通じて同一であり続ける物体を基礎づけるためには、個体の同一性を非物体的な実体ないし精神(魂・形相)に基礎づける必要があるということを明らかにした。初期のコナトゥスの精神化、中期の実体形相の復権、後期の単純実体としてのモナドという展開は、まさにその哲学的信念からなされた「連続体の合成の迷宮」を解決しようとする試みだったのである。 (3) デカルト派の代数における虚量の扱いに対するライプニッツの批判、とりわけマルブランシュの弟子であるプレステに対する批判を取り上げた。そこでは単なる「有用な虚構」であるにとどまらず、数学内部において虚量の実在的な定義を探求するライプニッツの数学的実践を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2014年は『モナドロジー』300年を記念する年であり、各地で様々な学会や研究会などのイベントがあった。また、ライプニッツに関連する翻訳の仕事もあり、ややそれに引きずられて、関連はするものの、本研究のテーマそのものに対する研究が十分に行えなかった。学務に多くの時間を割かねばならなかった影響も大きいだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、本課題の中心である、抽象の理論の観点からライプニッツにおける数学的存在の位置づけの解明に集中する。現代の抽象の理論も踏まえたいところではあるが、その研究はすでに膨大にあり十分検討する時間的な余裕もないため、17世紀における抽象の理論の解明に集中し、主に代表的な対抗論者と考えられるバークリとの比較から、ライプニッツの抽象の理論を考察したい。数学的存在の形而上学的基礎については、範囲としては、ライプニッツが「思惟的存在」をめぐる考察を展開している、中期ライプニッツの形而上学の観点から、スアレスとの比較を通じて、明らかにしていきたい。 また研究課題のために、ヨーロッパへの資料収集・取材を予定している。これは先年度の計画にあったもので、具体的には、抽象の理論について近年研究しておりフランスにおける指導教官でもあったJean-Baptiste Rauzy先生(パリ)、そしてライプニッツの数学の哲学、とりわけ幾何学の哲学のスペシャリストであるVincenzo De Risi氏(ベルリン、マックス・プランク研究所)を訪問する。そしてライプニッツの遺稿資料および研究資料があるライプニッツ・アルヒーフ(ハノーファー)における研究滞在を予定している。 夏期には数理哲学史に関するセミナーを企画している。テキストの研究および個人研究発表を行う予定である。研究者と交流し、数理哲学史という分野を確立していき、本課題の方法論的基礎を固めていきたい。
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Causes of Carryover |
書籍の割引や為替レートなどで数十円単位を使い切ることは難しく、ほぼ使い切っており、誤差の範囲内である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に有効に用いる。
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Remarks |
"LABYRINTHUS IMAGINATIONIS"は池田真治の研究ブログ。
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