2013 Fiscal Year Research-status Report
グノーシス的二元論を基軸とした現代フランス哲学の再理解
Project/Area Number |
25770010
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
伊原木 大祐 北九州市立大学, 基盤教育センター, 准教授 (30511654)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 宗教哲学 / グノーシス主義 / 二元論 / 現代フランス哲学 |
Research Abstract |
本研究は、古代グノーシス思想に特徴的な反宇宙的二元論との対比に基づきながら、主として二十世紀フランスで展開された哲学思想に対するオリジナルな視座を提示することを目指すものである。これに関わる本年度の研究成果としては、以下の二つが挙げられる。 (1)研究代表者が長期にわたって研究を進めてきたエマニュエル・レヴィナスとミシェル・アンリの現象学思想に潜むグノーシスの痕跡を炙り出すため、昨年度発表の論文「レヴィナス、アンリ、反宇宙的二元論」の続編として企図された発展的論考「主体の手前――レヴィナスとアンリにおける無名性の問い」(仏語)を口頭で発表した。この中では井筒俊彦やジョルジュ・バタイユとの思想的連関についても言及したが、こうした視点は従来あまり論じられてこなかったため、一定の学問的意義があると思われる。 (2)レヴィナスによるシモーヌ・ヴェイユ論(「聖書に抗するシモーヌ・ヴェイユ」)の翻訳および解題に従事した。その過程でヴェイユ特有のグノーシス的思考がもつ可能性を把握できただけでなく、レヴィナスによる二元論との明確な違いを確認することもできた。とくにプラトン哲学の再理解という見地からこの問題全体(現代フランス思想におけるグノーシス的痕跡)を見直すことが今後の理論的発展につながるのではないか、という示唆を得られたのは大きい。その見地に立つことで、たとえばシモーヌ・ぺトルマンによるグノーシス理解の根底にあるような、宗教的プラトニズムの問題が重要な課題となってくるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
口頭発表した論考「主体の手前--レヴィナスとアンリにおける無名性の問い」によって、当初計画していたレヴィナスとアンリにおける二元論的問題構成の解明に対し、発展的な形で寄与することができた。さらに、本来は次年度以降に予定していたバタイユやヴェイユとの連関についても研究の進展が見られた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画では、レヴィナス・アンリ以外の哲学者に関する比較検討を最終年度に予定していたが、今後はその計画をいくぶん前倒しにして研究のピッチを多少とも早めたいと考えている。「研究実績の概要」欄にも記載したが、本研究課題に効率よく取り組むためには、研究の枠内で取り上げる各思想家のプラトン読解こそが鍵になるとの結論に達した。そこで次年度は、ぺトルマンおよびヴェイユによるプラトン解釈を掘り下げ、そこからグノーシス的二元論との連関を解明するという方向で進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
年度末に予定していた旅費(学会参加)が当初の想定以上に安く済んだため、若干の未使用額が生じた。 次年度も引き続き研究に関連する文献の収集に予算の大部分を使用することになるが、学会出張など旅費の使用割合を今年度よりも増やす予定である。
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Research Products
(3 results)