2013 Fiscal Year Research-status Report
中世インドにおけるヤントラ儀礼文献を中心とした異宗教間の相互関係
Project/Area Number |
25770017
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Taisho University |
Principal Investigator |
倉西 憲一 大正大学, 付置研究所, 研究員 (90573709)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ヤントラ / 儀礼道具 / ヤマーリタントラ / ダーマラタントラ |
Research Abstract |
当該科研は、インドにおいて儀礼道具やお守りとして使用されてきたヤントラに関する文献記述を、特に8~10世紀の資料に限定し、文献学的見地から異宗教間(仏教とヒンドゥー教)の相互影響関係を総合的・多角的に考察することを目的としている。 まず、文献を用いた作業に関してであるが、初年度は仏教側の文献資料、ヤマーリ文献群のヤントラに関する記述の整理および校訂テクスト作成に従事した。ヤマーリ文献群の三つの主要文献のうち、クリシュナヤマーリタントラから取りかかった。同時に註釈書の校訂テクスト作成および翻訳も行い、クリシュナヤマーリタントラとその二つの註釈書における関連部分の校訂・翻訳作業が終了した。さらに、テクニカルタームの整理も暫定的に(最終的に他の文献資料とのすり合わせが必要)終了した。初年度は、当該科研の初動として、特に重要な文献を扱うことにより、ヤントラ研究に必要な作業および資料を確認することが出来た。 ヤマーリ文献など関連文献の新写本探索および収集、さらに現代のヤントラを巡る状況を調査するため、2月10日から19日までネパール・カトマンズへ出張した。写本資料が保管されているネパール国立公文書館に訪問し、収蔵庫にある写本を見せていただき、調査をおこなった。その結果として、二つの写本のデジタルデータを入手した。そして、カトマンズ市内において、現在も使用されているヤントラの調査を行い、いくつかのヤントラの写真を撮った。それらは主に土産物など扱っている店舗に祀られているものである。現在使用されているヤントラと当該科研で扱っている文献資料との関係を調査することで、現在のヤントラおよびその使用方法の状況を知ることができる。今年度はネパールで収集したが、次年度はインドへ赴き、ヤントラの実際を調査する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該科研関連文献の校訂作業については、今年度実施する予定であった仏教側の文献の中で、最重要であり、研究の中心となるクリシュナヤマーリタントラとその註釈書の校訂・翻訳作業、テクニカルタームの整理が終了している。その他の仏教側文献であるラクタヤマーリタントラおよびヴァジュラバイラヴァタントラの作業については、今年度終了していないので、次年度に繰り越される。ただ、分量が少ないので、早々に終える予定である。 新しい写本資料探索および入手、現在使用されているヤントラに関する資料収集は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、ほぼ当初の予定どおり進んでおり、次年度も計画に沿って、研究実施することになる。現在までの達成度に記したように、文献の校訂・翻訳作業に関しては、初年度実施するはずであったラクタヤマーリタントラおよびヴァジュラバイラヴァタントラが終了していないので、それをまず終了することが必要である。 研究を遂行する上での課題として、以下二点挙げられる。(1)文献を扱う作業に関する課題:作業効率および進度を上げるために、研究協力者に謝金を出し、関連テクスト打込やデータの整理を行っていただく必要がある。(2)現地調査に関する課題:作業効率を上げるために、インターネットを駆使し、特に次年度以降に行うインド調査へ向けて、現代のヤントラの作成や使用方法を詳細に調べておく必要がある。
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