2013 Fiscal Year Research-status Report
ライシテ(非宗教性)と宗教の公共性-ーフランス、ケベック、日本を事例として
Project/Area Number |
25770022
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
伊達 聖伸 上智大学, 外国語学部, 准教授 (90550004)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 宗教学 / ライシテ(非宗教性) / 政教分離 / 世俗主義 / フランス:ケベック:日本 |
Research Abstract |
本研究は、近代の政教関係を再検討し、「ライシテ」(非宗教性、政教分離、世俗主義)を、共生社会の原理として再構成することを目指すものである。そのために、フランス、ケベック、日本をフィールドとしながら、ライシテという政教構造における宗教の公共性の諸相を具体的にとらえる課題に取り組んできた。なお、その際には、フランスやケベックの事象は日本語で、日本の事象は外国語で発信することを心がけている。 本年度は、ライシテと宗教の公共性をとらえるための理論的アプローチとして、19世紀フランスにおける思想家(コント、トクヴィル、デュルケム)の宗教論をルソーの「市民宗教」の系譜に位置づけた。また、シャルル・モーラスの宗教的ナショナリズムの思想構造を明らかにした。 一方、パリで行なわれた国際シンポジウム「単数のライシテ、複数のライシテ――変貌と新たな課題」において、近年の日本の宗教の公共性について「ライシテ」の観点から論じる発表を行なった。 また、国際日本文化研究センターでのシンポジウム「宗教と公共性――神道と宗教復興から」や、神道宗教学会シンポジウム「国際比較の中の「神道」と「国家」」での発表を通し、ライシテに基づく公共空間にいかなる排除の論理がはたらいているのか、またライシテにおける自由主義的な分離の原則が対イスラームとの関係においてはしばしば管理の論理として発現する様子が見えてきた。これらについては論文にまとめる作業を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特に研究の妨げとなるようなことはなく、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究課題の遂行を通して、ライシテが提起する問題は、当該社会(フランス、ケベック、日本)の集合的記憶やアイデンティティの関連においてとらえていくことが必要であるという視座が開けてきた。今後の研究においては、この点を今まで以上に意識しながら、フランス、ケベック、日本のライシテ研究をさらに深めていく予定である。
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