2016 Fiscal Year Research-status Report
東南アジアにおけるイスラーム法学の受容と展開―学びの中心とウラマーのネットワーク
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25770023
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
塩崎 悠輝 早稲田大学, 国際学術院, 日本学術振興会特研究員 (00609521)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | イスラーム法学 / ファトワー / ウラマー / 東南アジア / 中東 / イスラーム / 近代国家 / 南アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、これまでの研究成果を日本語の単著のかたちにまとめて発表することに最も注力した。その結果、平成28年6月に日本語の単著『国家と対峙するイスラーム マレーシアにおけるイスラーム法学の展開』(作品社)を刊行した。この著書は、特別研究員としての研究課題である、東南アジアと中東、南アジアをつなぐウラマー(イスラーム学者)のネットワークが東南アジアにおけるイスラーム法学発展にどのように寄与してきたのか、という歴史的な過程を明らかにしたものである。この著書でまとめられた研究は、特別研究員としての三年間に行われた東南アジアでの現地調査、資料収集、資料の分析に基づいている。 これまでの研究をまとめるに際して、平成28年度中にもマレーシア、インドネシアでの現地調査を行った。この現地調査は、研究成果をまとめるために必要な補足的な調査であるとともに、今後の研究のための基礎的な調査でもあった。そのため、資料の収集と共に、ウラマーへの聞き取り調査、マレーシアに居住しているミャンマーからのロヒンギャ・ムスリム難民の調査等を行った。 マレーシアでは現地調査を行うとともに口頭発表を一度、カンボジアでは現地のムスリム少数民族チャム人についての調査を行うとともに口頭発表を一回行った。国内では、東南アジアと中東をウラマーのネットワークと東南アジアのムスリム社会における公共圏の形成に関する口頭発表を一回行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、特別研究員としての三年間の研究成果が単著『国家と対峙するイスラーム マレーシアにおけるイスラーム法学の展開』(作品社)にまとめられ、刊行された。同書はマレー語やアラビア語の膨大な一次資料の分析と長年に渡る現地調査に基づく意義深い研究であり、東南アジアのイスラームに関する研究への大きな寄与である。同時に、他にも国内国外での研究発表が続けられ、今後の研究に結びつく現地調査も引き続き行われた。 平成28年度中の研究は、東南アジアのイスラーム、中東と東南アジアの間のイスラームについての知的交流に関するこれまでの研究が、特別研究員としての三年間で着実な成果を挙げたことを示しており、さらには今後もこの分野での研究をさらに発展させうることを示している。したがって、平成28年度に研究は、期待以上の進展があったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
マレーシア、インドネシア、タイ南部、およびサウディアラビアで引き続き現地調査を行う。イスラーム法学に関する資料収集、資料の分析を行うとともに、現地の研究者、イスラーム学者との意見交換を行う。 研究成果を日本語の共著、英語の査読論文、日本語および英語の口頭発表のかたちで発表する。これらの研究および発表によって、特に東南アジアと中東の間のイスラーム法学上の相互影響に関する研究が進展する。研究課題を達成する上で、これまで不足していた中東方面についての研究を充実させることができる。
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Causes of Carryover |
これまでの研究では、研究課題達成のために必要な中東での現地調査および資料収集のための海外出張が十分にできていなかったため、次年度に行うサウディアラビアでの海外出張に使用する必要があった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
サウディアラビアで現地調査を行い、イスラーム法学に関する資料収集のための、旅費、資料の複写・購入費用、研究協力者への謝礼として支出する。
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Research Products
(6 results)