2013 Fiscal Year Research-status Report
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25770024
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
金 泰勲 立命館大学, 文学部, 任期制講師 (10608706)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 天理教 / 近代仏教 / 帝国史的観点 / 植民地朝鮮布教 / 病気直し / 近代東アジアの宗教 |
Research Abstract |
2013年度は研究発表2件と2編の論文を執筆することができた。研究発表は、中国の曁南大学で11月に行われた国際シンポジウム「他者認識と日本語教育・日本学研究」において、「朝鮮仏教の成立―「帝国仏教論」の射程」というタイトルで個人発表を行なった。具体的内容は、朝鮮半島において、1890年代頃から登場する「朝鮮仏教」という概念が、日本人仏教者たちとの接触過程でまずは日本人仏教者の眼差しをフィルタとしつつ登場したこと、そして1930年代までに、朝鮮民族の仏教というナショナルアイデンティティとの接合を果たしながら定着した概念であることを明らかにした。それは近代仏教研究の帝国史的観点からのアプローチを可能にする新しい視座として評価できる。これを論文としてまとめたものを同じタイトルで『ブッダの変貌』(法蔵館、2014年3月)に収録した。 同じく2013年11月に金光教大阪センターで行われた「布教メディア研究会」主催の講演会において「崔宰漢と韓国天理教」というタイトルで講演をした。その内容としては、天理教の植民地朝鮮布教と戦後韓国社会における天理教のあり方について話をした。 近代天理教の植民地朝鮮布教について考察するためには、明治期を通して天理教がその信者数を獲得していくもっとも重要な手段であった病気直しの内容も確認しておく必要がある。そのために研究論文「明治期天理教における「病気直し」の諸形態とその変容」(『日本近代学研究』40、韓国日本近代学会、2013年5月)を発表した。そのなかでは、現代韓国の天理教研究が、戦後韓国社会で唯一生き残った日本系宗教という、天理教に対する固着化した観念にとらわれていること、また、それが宗主国と植民地を共時的に存在していた近代日韓宗教の状況を、国民国家的境界線を準拠にして忘却させる観念であることを批判的に考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近代東アジアの宗教的状況を帝国史的観点から把握するために、日本帝国と植民地朝鮮の仏教、天理教を中心に研究を進めている。韓国の国家記録院、国立中央図書館での現地調査を行い、資料の収集、整理作業を行いならがその成果を学会などでの研究報告、論文掲載を通して発信している。
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Strategy for Future Research Activity |
韓国の国家記録院に所蔵されている朝鮮総督府の宗教関係文書を分析するとともに、今年度は、天理教を中心に韓国現地の教会をフィールドワークする予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定より物品が安く購入できた。 前年度の未使用分に関しては立て替えた本代として使用する。 次年度は、5月の「宗教と社会」学会、8月の中国広東外語外貿大学での国際学会への参加旅費および8月の韓国現地調査旅費などの調査費と研究書籍購入費として使用する。
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