2014 Fiscal Year Research-status Report
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25770027
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
後藤 正英 佐賀大学, 文化教育学部, 准教授 (60447985)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / ヤコービ / メンデルスゾーン / 翻訳 / ヘーゲル / 相互承認論 / 国際情報交換 / ヴォルデマール |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の宗教哲学会でのシンポの報告内容を『宗教哲学研究』に「世俗と宗教の翻訳可能性」として発表した。本論文は、ヤコービの哲学的表現方法を解明するための基礎作業としての性格をもっている。特に、この論文では、カントの時代から現代にいたる議論を参照しつつ、宗教的言説と世俗的言説の関係について考察した。カントは、実践理性によってキリスト教の意味内容を解釈する際に、基本的には理性を宗教的言説に対して中立的な存在であると考えていた。それに対して、ヤコービと親しい関係にあったハーマンは、理性を純化する過程で、言葉から理性を切り離そうとする発想を厳しく批判した。ハーマンとメンデルスゾーンは、宗教的伝統と理性が言語において結びつくと考える点では共通する見解をもっている。しかし、メンデルスゾーンは、理性と言語を一体視せず、独特の言語批判の思想をもっていた。あくまで人間の言語は不安定な媒介にとどまるのである。このような言語に関する諸理解を踏まえたうえで、今後、ヤコービの言語観を明らかにしていく必要がある。 12月に開催された日本ヘーゲル学会では「ヤコービの哲学小説における相互承認論」というタイトルで研究発表を行った。ヤコービは、『ヴォルデマール』と『アルヴィル』という二つの哲学小説の担い手であり、哲学と文学の分断を自明なものとする発想をもっていなかった。ヤコービの著作の大半は論争的な作品として書かれているが、それは彼の哲学が対話的性格をもっていたことに起因している。ヤコービが書簡体や対話形式の哲学小説を執筆したことも、彼が対話の哲学者であったことと関係している。ヤコービの哲学小説『ヴォルデマール』はへーゲルの『精神現象学』との照応見解の中で読解できる点が少なくない。本発表では、過去の先行研究を批判的に検討しながら、近代ドイツ哲学の発展に影響を与え続けたヤコービの足跡の一端を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
27年度に招聘を予定しているヤコービ研究者のザントカウレン氏、ならびに日本での講演会開催において協力を依頼している一橋大学の大河内大樹氏 、加藤泰史氏と日程等の調整を行った。さらに、へーゲル学会においてヤコービの哲学小説『ヴォルデマール』に関する研究発表を行い、研究を進展させることができた。以上の点から、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はヤコービ研究者のザントカウレン氏の講演会を一橋大学で開催し、ザントカウレン氏との意見交換等を行う。昨年度に着手したヘーゲルとヤコービの相互関係についての考察を進展させながら、ヤコービの論争の哲学者としての性格づけと、その執筆スタイルについて、研究をまとめたい。
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Causes of Carryover |
平成27年度に海外の研究者を招聘するにあたって諸費用が必要となるため、26年度の予算を少し残しておくことで、27度の予算使用に余裕をもたせた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ドイツから研究者を招聘し、一橋大学で二回の講演を行う。その際に、旅費、謝金等の支払が必要となる。
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