2013 Fiscal Year Research-status Report
神学的動物論と倫理学的動物論の相互影響関係-1910年代以降の「動物の尊厳」論
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25770030
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
浜野 喬士 早稲田大学, 文学学術院, 助教 (20608434)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 動物論 / 哲学 / 倫理学 / 尊厳 / 神学 / プラトナー / フィヒテ / カント |
Research Abstract |
本研究課題は、近年台頭してきた神学的動物論と呼ばれる学問領域が、先行する哲学的・倫理学的動物論と、どのような影響関係にあるか、「動物の尊厳」概念に焦点を置きつつ解明するものである。本年度はその哲学的前史として近代の動向を、人間学および思弁的生理学の観点から確認した。研究方法としては、近代的人間概念が成立する過程を、カント人間学の成立に関する同時代的影響関係の探求、およびフィヒテ自然法論における動物論および人間論の思想史的位置づけの確定を通じて精査した。またプラトナーを中心とする近代的思弁的人間学、生理学、動物論の一次資料を収集した。学会発表「カントとプラトナー:18世紀後半の2つの人間学構想」(日本カント協会第38回学会:早稲田大学、2013年11月23日)ではプラトナーに代表される思弁的人間学の隆盛という当時の状況との比較の中で、カントが人間学講義および後年の「実用的」な人間学著作を形成したことを明らかにし、むしろカントの人間学構想こそ、同時代的観点からすれば特異なものであったことを浮き彫りにした。こうした考察により近代的人間概念に秘められた内的緊張関係を解明した。また学会発表「フィヒテの動物論」(日本フィヒテ協会第29回大会:お茶の水女子大学、2013年11月24日)では『自然法の基礎』(1976年)、および「プラトナー講義」の分析を通じ、フィヒテにおいては、プラトナーのように経験的に観察される人間あるいは動物の諸部分から、自然目的論的に上方への遡行が行われるのではなく、自由で理性的な存在者としての人間の自己実現という観点から、人間の目的および手段としての身体が演繹される、という体制が取られていることを解明した。こうした今年度の作業を通じ、近代哲学における「人間」概念の思想史的地位の一端が明らかになり、現代神学における「動物」概念を検討するための準備作業が進展した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近代的、哲学的文脈における人間と動物の区分、および近代的意味における人間の卓越性と尊厳がいかに形成されたかを本年度確認できたことにより、来年度以降の現代的神学における動物の位置づけに関する解明が進展するものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度は、アルベルト・シュヴァイツァーの「生への畏敬」概念を再検討し、同時にカール・バルトが『教会教義学』において展開している「動物・植物の尊厳」論を考慮しつつ、バルトによるシュヴァイツァー批判を総合して、論文としてまとめる。また研究遂行に必要な1910年代以降の文献の収集・分類・整理を行なう。また動物論単著に向けた作業も進める。
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Research Products
(2 results)