2015 Fiscal Year Annual Research Report
神学的動物論と倫理学的動物論の相互影響関係-1910年代以降の「動物の尊厳」論
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25770030
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
浜野 喬士 早稲田大学, 文学学術院, 招聘研究員 (20608434)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 哲学 / 倫理学 / 人間動物関係論 / 思想史 / 環境思想 / 環境倫理学 / 動物倫理学 / 比較思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
当方は動物の権利論を超えて、動物の尊厳を説く動物神学という新興領域の研究を行っている。動物の尊厳という概念は、人間の尊厳という、人間に排他的・特権的に付与されてきた地位を相対化するという重大な問題を含んでいることから、まず人間の尊厳の思想史的展開を整備する必要があった。 こうした問題意識から、フォルカー・ゲアハルトの論文「人権とレトリック」、およびトーマス・M・シュミットの論文「世界憲法体制という基本的法権利?」の翻訳を行った。また同様の問題関心からエルンスト・ブロッホの著作『自然法と人間の尊厳』を作品社より2017年5月に単訳として出版する。これらは動物の権利論前史という意味合いを持つ。 またカント『判断力批判』は、よく知られる前半部の美をめぐる議論とは別に、後半部の「目的論的判断力の批判」という箇所で、動物の身体構造、機械論と目的論の対比、有機体の意義といった、一種の動物論を展開している。のみならず、カントはこの第二部に付した「方法論」と呼ばれる箇所で、有機体と神学の関係、自然における被造物の意味と人間の位置といった、動物と神学にも関わる議論を繰り広げている。このため、『判断力批判』の研究は人間・動物関係論と神学の関係を考える上で重大な意味を持つ(これらは前年度論文「フィヒテの動物論と18世紀人間学:プラトナー、カント、フィヒテ」の延長線上にある)。 こうした問題関心から、伊語という制約もあり未翻訳であったトネリの「『判断力批判』テクストの生成」を翻訳した。さらに、小田部胤久、竹山重光の両氏とともに、日本カント協会のシンポジウムにおいて報告「カント『判断力批判』初期影響史」を行った。同報告は論文として『日本カント研究17』に収録が決定している。 なお本年度を含むこれまでの研究成果は、2018年6月に『否定獣学:人間・動物関係論序説』として作品社より出版する。
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Research Products
(6 results)