2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25770038
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
御園生 涼子 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (70613868)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 映画研究 / メディア論 / 政治哲学 / 日本近現代史 |
Research Abstract |
本プロジェクトの研究対象である映画監督・大島渚の、主に中期にあたる作品を中心に国内外の資料の調査・研究を行った。具体的には、5月に川崎市民ミュージアムで行われた「大島渚テレビ・ドキュメンタリー・レトロスペクティヴ」で上映された作品群の視聴・調査を行ったほか、大島の中期代表作である作品『儀式』(1971)に関連する英・仏・日の文献、新聞・雑誌などの紙媒体を収集し、調査・検討を行った。 以上のような資料調査の成果を活かし、主に大島渚本人が「自らの戦後史を総括した」、「もっとも自伝的な要素の強い作品である」と述べている作品『儀式』(1971)を主要な分析対象として、作品内における「説話論的」および「視聴覚的」なモチーフによって大島が展開させる、いわゆる西洋政治哲学的な純粋理念としての「民主主義」とは異なった第二次大戦後の日本特有の歴史・社会的事象としての「戦後民主主義」という概念と、明治初期から近代日本の歴史を通じて家父長制をモデルに形成されてきた「天皇制」の問題に焦点を当て、両者の両義的な関係について分析を行った。その成果は、今夏刊行予定の『映画学叢書』(ミネルヴァ書房)に掲載される予定である論文「呼びかける死者たちの声」において、「民主主義」概念と歴史概念の齟齬、および連合国軍が打ち立てた「象徴天皇制」の政治的意味の分析において結実させている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今まで観ることのできなかった大島渚のテレビ・ドキュメンタリーの実視・実聴の機会が得られたほか、本プロジェクトの中心課題である「国家とその内的な他者」という問題系に沿って、戦後民主主義における国家とその周縁に偏在する問題を掘り下げ、大島の中期代表作である作品『儀式』の資料調査および本プロジェクトの核の一つとなる論文「死者たちの呼び声」(ミネルヴァ書房より刊行決定済)という形にまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
大島渚作品の『愛のコリーダ』(1976)『戦場のメリークリスマス』(1983)に代表される後期作品の資料調査を進め、論文の形でまとめてゆく。また、意見交換の機会として、今年6月に「東京大学共生のための国際哲学センター」において、国内外の大島渚研究者を招き、英語によるワークショップを開催する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額の大半は平成25年度に行った海外調査旅費および物品購入費への支出が確定している。 次年度使用額のうち、上記理由で支出したものの残額はアメリカ議会図書館(ワシントン)での調査にかかる渡航費および費用の一部にあてる予定である。
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