2013 Fiscal Year Research-status Report
対抗宗教改革期のフィレンツェにおける中世・ルネサンス美術の再設定
Project/Area Number |
25770047
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Keisen University |
Principal Investigator |
伊藤 拓真 恵泉女学園大学, 人文学部, 助教 (80610823)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ルネサンス美術 / フィレンツェ / 対抗宗教改革 / ジョルジョ・ヴァザーリ / サンタ・マリア・ノヴェッラ / サンタ・クローチェ聖堂 / 聖堂改修 / ドメニコ・ギルランダイオ |
Research Abstract |
サンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂およびサンタ・クローチェ聖堂(フィレンツェ)について、研究の対象とする範囲を明確とするための基礎調査を行った。具体的には、改修前の両聖堂に制作されたことが判明している作品をリスト化するとともに、改修の時点で制作された祭壇画についても現状の確認を行った。E. Giurescu, Trecento Family Chapels ..., Diss., 1997やM. Hall, Renovation and Counter-Reformation, Oxford, 1979を主たる資料とし、各種のモノグラフなどで情報を補完した。 また当初の予定通り、聖堂改修後のサンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂の主礼拝堂の装飾の変遷について、特に集中した調査を行った。同聖堂修道院付属古文書館での調査では、礼拝堂の18世紀末の様子を詳細に記述した史料を発見し、現在は各地に散逸している主祭壇画の再構成を行うことが可能となった。同作品は15世紀末にギルランダイオによって制作されたが、16世紀の聖堂改修で場所を変更されたうえで、19世紀初頭まで使用され続けた。諸聖人の姿を描いた主要画面の再構成について、現在一般に受け入れられているものとは異なる配置が18世紀当時になされていたことを特定し、16世紀後半の聖堂改修との関連を分析した。また、プレデッラについても図像内容の全貌を明らかとしたうえで、新たに3パネルをその一部であると特定した。同研究の結果は英文にて既に論文化し、Mitteilungen des Kunsthistorischen Institutes in Florenz誌上での掲載が決定している(2015年出版予定)。また聖堂改修の前後における祭壇画の移動については、別途『恵泉女学園大学紀要』26号(2014年)掲載の論文で論じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
文献資料による調査のほか、所属大学の夏期・春期の授業停止期間を利用した実地調査を行った結果、研究はおおむね順調に進展している。基礎的資料として用いるために準備した作品リストの制作にあたっては、来歴の特定が困難な作品も多く、今後の対応を検討している。 サンタ・マリア・ノヴェッラ聖堂の主礼拝堂の調査においては、新出の古文書の情報により、当初期待していた以上の成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、2013年度中に作成した関連作品リストを基礎資料とし、16世紀半ばの美術史・美術批評的言説との対照を行う。主たる分析対象とするヴァザーリの『芸術家列伝』では、初版と第2版の対比を行うために、両版を収録したバロッキ版(P. Barocchi - R. Bettarini, eds, Firenze, 1966-)を底本とし、関連個所を特定する。その他のヴァザーリの書簡やボルギーニなどの関連人物の言説に関しても先行研究を参照する。ただし、板絵や彫刻などの移動が容易な作品については来歴の特定が困難なものも多く、一貫性のある分析を行うことが難しいことも多いため、壁画などの移動の少ない作品を集中的な分析の対象とすることも検討する。また、同時代に行われたフィレンツェの諸聖堂の改修を比較対象として調査する。なかでも、サンティッシマ・アヌンツィアータ聖堂については、両聖堂に先行する例として、比較分析の対象とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
所属大学の会計期間の問題により、2014年度2月から3月にかけて行った調査中に生じた諸費用の計上が当該年度に計上されず、2014年度分に計上されることになった。また、研究の進展状況を調整するにあたって、当該年度に予定していた幾つかの文献資料の購入の手続きを2014年度におこなうことになった。 2014年度2月から3月にかけて行った調査に関する諸費用は既に2014年度分の会計に計上している。当初、2013年度に購入予定であった文献資料の購入手続きも現在進めている最中である。
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Research Products
(2 results)