2013 Fiscal Year Research-status Report
日本および東アジアの人形燈籠(lantern)制作技法の比較分析
Project/Area Number |
25770055
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
三浦 俊一 弘前大学, 学内共同利用施設等, 研究員 (30633143)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 人形燈籠(lantern) / 技法分析 / ねぷた・ねぶた / 国際研究者交流(中国、台湾) |
Research Abstract |
平成25年度は、調査地域を検討した結果、国外の調査地域を変更し、①中国上海≪上海豫園新春民俗芸術灯会≫②台湾南投県≪台湾灯會≫③台湾台北≪台北灯會≫にて実地調査を行った。また国内では④長崎県長崎市≪長崎ランタンフェスティバル≫にて実地調査を行った。上記の①~④は、いずれも中国や台湾における春節および元宵節の行事の一環として人形燈籠を展示している。本研究の目的である人形燈籠(lantern)の制作の担い手、制作技法などを明らかにするため、各地域で、制作技能者などに聞き取り調査を行った。 その成果として、制作技能の担い手については、①~③ではいずれも有償で専業の技能者が存在することが明らかになった。①では、農業従事者の農閑期の副業として、制作に従事している事例も多いことがわかった。②や③では、有償の技能者による作品展示のほか、学校教育の一環として子どもたちが制作した作品や、刑務所の服役者よる作品など、無償の技能者がコンテストの形式で制作・展示に参加している事例もみられた。④の地域では、制作技能者を有しておらず、②や③の地域で制作された人形燈籠を輸入し、展示していることがわかった。また、制作技法については、①~④に共通することとして、人形燈籠の表面の材料として、紙ではなく布を用いている点が、日本の人形燈籠との大きな違いであることがわかった。表面に貼られる布はあらかじめ着色されたものであるため、制作プロセスにおいて着色を行うことは、グラデーション表現などに限られている。また、日本の人形燈籠に多く見られる、墨やロウを表面に描写する技法が全く用いられていない。人形燈籠を形作る骨組の材料として針金を用いる点や、立体を構成する針金の組み合わせ方は、日本の人形燈籠と類似性がみられた。 聞き取り調査対象者には、平成26年度に開催予定のシンポジウムへの参加を打診しており、日程などを調整している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、交付申請書に記載したように以下の4項目である。①人形燈籠(lantern)の制作プロセスを詳細に調査し、技法を明らかにする。②人形燈籠(lantern)の制作がどのような担い手によって行われているかを明らかにする。③人形燈籠(lantern)制作の背景に、どのような地域的特色が存在するかを明らかにする。④国際的シンポジウムの開催、複数の言語による報告書作成により、地域間交流の機会をつくる。 上記の①~③については、研究計画における実地調査と聞き取り調査が順調に進んでおり、計画通り今年度の6月までに完了すべく調整中である。また、④については、今年度11月に予定している国際シンポジウムと報告書作成についてもその準備を進めている。これらのことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策については、研究計画に従って実地調査と聞き取り調査を進める予定である。その際、聞き取り調査対象者にはシンポジウムへの参加を依頼している。実地調査での聞き取り調査が不十分であれば、シンポジウム実施時に、再度聞き取り調査を行うことを検討している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費について、研究計画で予定していたデジタルカメラとビデオカメラの購入を行わず、大学備品を借用することとしたため、余剰が生じた。また、旅費に関して、研究計画では海外での実地調査には2名で臨むことを予定していたがこれを1名で行ったことと、一部の実地調査の実施時期を平成26年度に変更したために、次年度使用額が生じた。 次年度使用額については、平成26年度に実施時期が変更された実地調査に充てるほか、シンポジウム招聘者の増員や通訳の増員など、シンポジウムへの招聘に関する諸経費に充てることを検討している。
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