2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25770066
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Research Institution | Tama Art University |
Principal Investigator |
江村 忠彦 多摩美術大学, 大学院美術研究科, 助手 (50648516)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 彫刻 / 乾漆 / 脱活乾漆 / 木心乾漆 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、工芸技法としてではない、彫刻技法としての乾漆表現について、歴史的にその使用法を検討しながら今日の制作実践に於いて活用することによって、これまでにない新たな技法を生み出すことを目的として行うものである。これまで、乾漆技法によって近代彫刻史上に類稀な優れた手業を残す乾漆作品に関する臨地調査、漆が生まれ出る瞬間ともいえる漆掻きの実践とその記録化、また各種乾漆技法による(主に伝統的な)「造像」方法に焦点を当てた既往研究の確認につとめてきた。 平成27年度は、これらをまとめつつ論考上不十分な点を補い、得られた知見に基づいて、更に数点のこれまでにない新たな制作実践に繋げてきた。また平成27年の12月には、研究期間中の全作品と調査報告ならびに論考を以って研究発表展「乾漆彫刻の可能性―江村忠彦展」(於:八王子市芸術文化会館いちょうホール1階展示室)にて広く公開し、適宜来館者から今後の研究の進展に繋がる反応を受けた。また本展覧会に合わせて、論文「現代に於ける乾漆技法を用いた彫刻表現研究―これまで、今とこれから-」並びに作品図版を掲載した報告書を刊行した。とりわけ本論文では、同一原型から通常の乾漆技法のみならずFRP、人工漆の3種類に材質転換した結果を掲載している。その違いは視覚レベルでは極めて僅差であったものの、各素材の性質は露になっているものと捉えられ、触知レベルでは明瞭な差異が確認された。本冊子については来館者のほか国内の主要美術関係機関、図書館等に送付しており、今後のフィードバックが待たれるところである。
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