2015 Fiscal Year Research-status Report
映画の幕末=明治維新表象に見る女性の位置付け ― 《唐人お吉》を中心に
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25770068
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
羽鳥 隆英 早稲田大学, 付置研究所, 招聘研究員 (70636026)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 日本映画 / 明治維新 / 女性表象 / 被占領期 / 山口淑子 / 植木金矢 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度の第一の研究実績は単著『日本映画の大衆的想像力 《幕末》と《股旅》の相関史』(雄山閣、2016年)の刊行である。京都大学「平成27年度総長裁量経費人文社会系若手研究者出版助成」を受けた本書は、2013年の博士号取得に際し、京都大学大学院人間・環境学研究科に提出された学位論文『日本映画の大衆的想像力 幕末映画と股旅映画の相関史』を骨子に、本研究の最新成果を加筆した改訂版である。具体的には、第3章補論「帝都最後の日の後日譚 《女》が取り持つ《男》同士の絆」を加筆し、明治維新60周年前後の昭和初年から15年戦争下を通じ、幕末映画(幕末=明治維新を表象した映画)を構造化するジェンダー論的階層性(国民国家日本を想像し得る上位の《男》/想像し得ない下位の《女子供》)を指摘した上、被占領期の問題作『わが生涯のかがやける日』(1948年)との連続性を考察した。 第二の研究業績は前述の『わが生涯のかがやける日』論から派生した同作の主演女優山口淑子を巡る研究である。具体的には、日本映画学会例会の研究発表「日本人・李香蘭帰る 被占領期の山口淑子を巡る試論」(東京海洋大学、2015年6月20日)や公開講座「運命の歌姫 李香蘭」(神戸映画資料館、2015年8月29日)などの機会を通じ、日本映画の女性表象史に重要な位置を占める李香蘭=山口淑子論を深化した。2016年度中に論文化の予定である。 また漫画家植木金矢の幕末=明治維新表象と日本映画史との相関性を巡り、日本映像学会大会の研究発表「配役を夢想する 植木金矢の剣劇漫画への映画史的接近」を実施したほか、神戸映画資料館所蔵映像の網羅的調査に参画し、田中絹代出演『大都会・労働篇』(1929年)、原節子出演『検事とその妹』(1937年)、美空ひばり出演『南海の情火』(1950年)など、山口同様に日本映画の女性表象史に重要な位置を占める女優の出演作に学術的な光を投じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初は本研究の最終年度に予定した単著につき、博士学位論文に総合しつつ前倒しで出版し得たのに加え、新たに山口淑子論を更新する地平を開拓し得た。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年4月に新潟大学人文学部助教(任期3年)と国際日本文化研究センター客員准教授(任期1年)に着任し、本研究の遂行に必要な研究環境が回復されるため、順調な進捗が予想される。また早稲田大学演劇映像学連携研究拠点の公募研究「淡島千景資料の多角的研究 宝塚・映画・五輪・野球」に採択され、1950年代の幕末映画に主演あるいは重要な役柄で助演した女優淡島千景についての共同研究を統括するため、本研究との相乗効果が期待される。
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Causes of Carryover |
京都大学「平成27年度総長裁量経費人文社会系若手研究者出版助成」の採択に際し、2015年度内の出版完了が契約中に盛り込まれたため、当初の研究計画に修正を加えた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前述の山口淑子論の問題意識と研究成果も念頭に置きつつ、当初は2015年度の実施を想定した研究、すなわちハリウッド映画における日本人/アジア人女性表象における《唐人お吉》の問題を考察するために使用する。
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Research Products
(4 results)