2016 Fiscal Year Annual Research Report
The Reseach of Edogawa Ranpo's Old Library
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25770080
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Research Institution | Kyoto Koka Women's University |
Principal Investigator |
望月 和歌子 (宮本和歌子) 京都光華女子大学, キャリア形成学部, 講師 (60638196)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 日本近代文学 / 宗教史 |
Outline of Annual Research Achievements |
大正時代末期から昭和に活動を行った江戸川乱歩が創作において典拠とした書籍を探り、彼の思想や文化的背景を把握することで、当時の人々が広く有していた知識や娯楽的関心とはどのような歴史、文化的基盤で形成されたのか、その一端の解明を試みた。 その研究過程において、当初計画していた内容には含まれていなかった予想外の知見が得られ、新たに研究計画を発展させることとなった。乱歩のデビュー間もない大正末期、彼の父親が「三重の山奥」の行者の下に一時期身を寄せていたが、その「三重の山奥」の場所が予期せぬことから判明した。さらなる現地調査、文献調査を行って当該地の歴史、行者の氏名や生没年、活動内容を解明した。父親と乱歩の関係は乱歩の創作に影を落としており、多くの作品に父親への葛藤が見られることを明らかにした。 しかし、江戸川乱歩の作家初期の実態解明という以上に、「三重の山奥」とそこにいた行者の存在の発見は日本近現代の宗教史において大きな意義を持つものであったと考える。一つには、近代の文学資料が、地方でひっそりと活動していた無名の宗教家の発掘に寄与することを証明したことが挙げられる。もう一つには、過去には土地の名所であった場所が歴史的変遷に伴う人々の生活様式の変化により寂れ、その後全く異なる理由から再興され、時代の変化ごとに信仰内容に変遷を見せながら現代まで受け継がれていた興味深い例の提示となったためである。 この地に関する研究の推進は、日本における江戸時代から近現代の民間信仰の変化からもさらなる発展が期待される。ついては、宗教史や地方史の知識を有する研究者との連携を図り態勢を整え、今後も研究を行いたい。
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Research Products
(3 results)