2013 Fiscal Year Research-status Report
近世期怪異観の基礎的研究―近世怪異小説を中心として―
Project/Area Number |
25770082
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
門脇 大 神戸大学, 人文学研究科, 非常勤講師 (30634133)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 近世文学 / 怪異 / 心学 / 弁惑物 / 居行子 / 西村遠里 / 平田篤胤 / 新井白石 |
Research Abstract |
本研究の主目的である「近世期における怪異観の実態」の解明に関して、以下3点の研究を行った。 第1に、弁惑物とその周辺分野に関する研究である。具体的には、西村遠里『居行子』(1775年刊、「後篇」以降は順次刊行)を取り上げ、特に『居行子後篇』(1779年刊)を本研究の問題意識に沿って検討した。該書には、種々の俗説が記されており、その中に「妖怪之説」があり、弁惑物と共通する怪異認識、および引用関係があることを明らかにした。上記の内容を「弁惑物とその周辺―『居行子』を手がかりとして―」として、「第33回日本文学協会研究発表大会」(2013年7月7日、神戸大学)において口頭発表を行った。論文は準備中である。 第2に、心学における怪異観に関する研究である。具体的には、心学資料に認められる怪異認識に関する言説を抽出し、検討した。特に、『古今妖物狐心学』(写本、1814年奥書)の実地調査を行い、内容を検討した。また、数点の刊本を収集・整理して、怪異認識に関する言説を検討した。上記の内容を「江戸の見立化物―『古今妖物狐心学』、心学の化物―」として、「第45回国際日本文化研究センター国際研究集会 怪異・妖怪文化の伝統と創造―ウチとソトの視点から」(2013年11月26日、国際日本文化研究センター)において口頭発表を行った。論文は国際日本文化研究センターより近時公開される予定である。 第3に、次年度以降に研究を予定している新井白石『鬼神論』、平田篤胤『鬼神新論』、および通俗仏書、さらにはそれらと関連の認められる資料・研究文献の収集と整理を行った。その成果は次年度以降に発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2013年度は、2分野(弁惑物の周辺・心学)に関する学会発表を行った。そのうち1点(心学)は近時、論文として公開される予定である。また、次年度以降に予定している研究に有用な資料(国学・仏教)の収集は順調に進展している。ただし、当初の計画では2014年度に行う予定であった研究(心学に関する研究)を先取りして行った。しかし、全体の「研究目的」から外れるものではなく、大きな問題はない。研究初年度としてはおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に「研究の目的」、および「研究実施計画」に従って研究を進める予定である。ただし、当初の「研究実施計画」では、2014年度の予定であった心学に関する研究を2013年度に行い、すでに成果の一部(心学に関する研究)を発表した。これに関しては継続・発展して研究、およびその公開を行う予定である。今後は、2013年度に予定していた「儒教・国学に関する研究」、さらに2014年度に予定している「仏教に関する研究」を推進していく予定である。当初予定していた「研究実施計画」の順序が前後してしまったが、本研究は相互に密接な関係を保ちつつ進めることのできるものであり、特に課題とすべきことではない。 また、当初の予定には入っていなかったが、「天狗」に関する通史的な研究を予定している。すでに基礎調査は完了しており、本研究と密接な関係が認められるため、本研究に取り入れることとした。 なお、弁惑物の周辺分野(儒教・国学/心学・仏教)に関する資料収集・調査・整理は今後も継続して行う予定である。
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