2016 Fiscal Year Annual Research Report
Early modern period grotesque sense of fundamental research-early grotesque novel centering-
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25770082
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
門脇 大 神戸大学, 人文学研究科, 人文学研究科研究員 (30634133)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 近世 / 怪談 / 化物 / 妖怪 / 海坊主 / 居行子 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は、「近世期における怪異観の実態」を解明するという本研究の主目的に沿って、1冊の共著と1本の論文を公表した。以下に具体的に記す。 1)鈴木健一編『海上の文学史』(三弥井書店、2016年)。本書のうち、「海の化物、海坊主―化物の変遷をたどる」(P231~P248)を執筆した。2015年度の研究実績に記した論考に改訂を加えて刊行された。概要は2015年度の研究実績を参照。 2)「『居行子後篇』巻之四「妖怪之説」―近世怪談の一脈―」(『日本文藝研究』67-2・68-1合併号)。西村遠里『居行子後篇』(1779年刊)巻之4「妖怪之説」の記述を中心に、18世紀後半における怪異観の一端を検討した。当該話を検討することにより、怪異現象の原因を人に求め、さらに不可知論を展開するという怪異観を見出した。「妖怪之説」は、怪異現象の否定や暴露を行う弁惑物の具体的な引用が認められるし、当時の思想を如実に反映した資料である。当該話が弁惑物の鷹見爽鳩『秉燭或問珍』(1710年刊)を引用している点を指摘して、両者を具体的に比較し、弁惑物の享受の様相を明らかにした。さらに、両者の相違点を仔細に検証することによって、当時における怪異観の一端を明らかにした。特に注目すべき点は、「世のすべてが不思議なのだ」という不可知論が展開されていることである。このような思想は、当時の老荘思想の流行を反映したものと考えた。以上の点を、具体的な資料に基づいて明らかにした。そして、18・19世紀の怪異文芸の流れを踏まえて、当該作に現れている怪異観の位置づけを行った。 上記の1)、2)に加えて、刊行には至らなかったものの、18・19世紀を中心とした近世怪談と、その周辺分野(心学、在地伝承など)に関する研究を行った。これらは、近時まとめて公表する予定である。
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