2015 Fiscal Year Annual Research Report
「営業案内」「職業案内」に関する出版史料的価値の検討
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25770083
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
磯部 敦 奈良女子大学, 人文科学系, 准教授 (00611097)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 営業案内 / 職業案内 / 立身出世 / 独立自営 / 出版史料 / 出版史 / 近代史 / 商業史 |
Outline of Annual Research Achievements |
国立国会図書館が所蔵する、明治時代に刊行された営業案内本・職業案内本を対象に、印刷・製本などの書物生産業、出版・流通に関与する書物出版業、貸本屋や古本屋など書物流通業に関する言説の調査・分析をおこなった。最終年度では、それまでの調査・分析をふまえての研究発表、および活字化をおこなった。概要は以下のとおりである。 (1)日本出版学会関西部会での発表「明治期の出版(社)史料について―出版史研究の手法を討議する―」(2015年9月19日、於関西学院大学)において、営業案内本・職業案内本の持つ出版資料的価値について報告した。具体的には、当初の職業案内本では立身出世と結びついた修養的言説が多かったが、日清戦争を契機としてそうした修養的文言は後景化し、かわって功利性を前面に出した言説が多くなることを指摘した。また、こうした変化は、書物関連職における、職人や徒弟制度のもとでの修養から独立自営へという変化と期をおなじくしていることを指摘した。 (2)日本出版学会秋季研究発表会におけるシンポジウム「出版のパラダイム転換と歴史へのまなざし」(2015年12月5日、於奈良女子大学)において、出版史を検討する新視点としての営業案内本・職業案内本について言及した。一次史料にもとづく実態解明からすれば、営業案内本・職業案内本はその対極にある資料ということになるが、時代相を如実に反映してもおり、書物関連職をとりまく心性がうかがい知れる史料でもある。出版史の多角的検証の事例のひとつとして言及した。 (3)上記の検討をふまえ、「職業案内本の〈近代〉、あるいは時代閉塞の現状について」と題した論文を作成した(前田雅之・青山英正・上原麻有子編『幕末明治 移行期の思想と文化』、勉誠出版、2016年5月)。また、日本出版学会ウェブサイト「関西部会・臨時増刊」において、2016年7・8月に上記の成果を報告する予定である。
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Remarks |
「出版史研究の手法を討議する」は日本出版学会関西部会が連続でおこなっている部会検討会で、各発表者が報告の要旨を日本出版学会ウェブサイトに掲載・連載している。磯部は2016年7月・8月に掲載の予定である。
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Research Products
(8 results)