2013 Fiscal Year Research-status Report
1960年代のテレビ文化黎明期におけるテレビドラマ制作と〈文学〉
Project/Area Number |
25770084
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
瀬崎 圭二 広島大学, 文学研究科, 准教授 (70413284)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | テレビ / テレビドラマ / 戦後派 / 佐々木基一 / 椎名麟三 / 野間宏 / 安部公房 |
Research Abstract |
平成25年度の研究成果は拙論「作家が見たテレビ―可能性としてのテレビドラマ」(『広島大学大学院文学研究科論集』73 2013年12月)にまとめた。テレビドラマと文学との関係について調査した研究がほぼ皆無であることを考慮して、本研究の可能性を示唆しつつ、まずは、テレビ文化黎明期の文学者たちによるテレビの認識のあり様や、文学者のテレビ出演、テレビ視聴などの事例を調査した。次に、当時のテレビをめぐる様々な言説をふまえて、1950年代後半にテレビというメディアに大きな期待を寄せ、テレビについて多くの発言を残した文芸評論家佐々木基一の動向を調査した。当時の佐々木は、自身の発言を『テレビ芸術』という著書にまとめ、テレビドラマの脚本を執筆してその制作に積極的にかかわったが、1960年を境にテレビからは距離を置くようになることが確認された。さらに、佐々木と同様に、当時、テレビドラマ制作に関与した戦後作家たちのテレビドラマ作品を洗い出し、椎名麟三、野間宏、安部公房らが脚本を担当したテレビドラマの情報を収集した。その過程として、当時テレビドラマの専門誌として刊行されていた雑誌『テレビドラマ』を全冊調査し、当時のテレビドラマの状況や、文学者によるシナリオが同誌に多く掲載されていることを確認した。日本近現代文学研究においては作家の動向を中心に研究が進められるケースが多く、テレビというメディアと文学との関係についての総体的な研究は存在しないので、このような視点で〈文学〉という現象を分析することには大きな意義があるように思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究の目的は、文学者がテレビという新しいメディアをどのように捉え、そこにどのような可能性と限界を見ていたのかという点を調査することにあったので、その点については概略をおさえることができたと思われる。また、科研費の取得により、当時の専門誌『テレビドラマ』を全冊調査することができた点も、大きな研究の進展であった。一方で、当時のテレビドラマ作品が現存していないケースが多く、今年度は、その作品における様々な表現の力学を暴き出すところまでは考察が及ばなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、現存しているテレビドラマ作品の所蔵調査と視聴に努め、具体的なテレビドラマ作品の分析を進める計画である。その際に必要なのは、映像学や社会学、カルチュラル・スタディーズなどの、テレビドラマ分析の方法論を身につけることであろう。また、分析の対象となるテレビドラマ作品の同時代資料や関係資料を丹念に調査する必要も生じる。今年度の概要把握をふまえ、そのような形で、さらに研究を具体化していきたいと考えている。
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