2013 Fiscal Year Research-status Report
1920~30年代の大衆文学の展開とメディア・ミックス現象に関する総合的研究
Project/Area Number |
25770086
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
笹尾 佳代 徳島大学, 大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部, 准教授 (60567551)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | メディア・ミックス / 大衆文化 / 映画 / 菊池寛 / 樋口一葉 |
Research Abstract |
本研究は、「大衆文学」という新ジャンル成立の動きと、1920年代以降に起きていたメディア・ミックス現象との関わりに注目するものである。メディア・ミックス現象を、「大衆」と対峙しようという姿勢の現れとして検討すること、また、多様なメディアを通した範囲の大衆文化創出の諸相について捉えることを目的としている。平成25年度は、以下のような研究実績をあげた。 1)「大衆文学」というジャンルの成立そのものに関わる、「講談」から「小説」へ、というメディア横断についての基礎調査を行った。具体的には、「大衆文学」というジャンルの成立を示したものと評価される「現代大衆文学全集」(平凡社、1927年~、全40巻)の収録作家・作品の調査を行い、すでに流通していた講談との物語内容の重なり等の調査を進めた。 2)個別的な事象の分析・調査を進め、物語が「大衆」へと受け渡そうとされる際に起きていた諸問題を検討した。個別的な事象の一つは、大衆文化創出の担い手の一人であった菊池寛の小説とその映画化についてである。享受者を巻き込むような物語構造をとることを通して華やかなモダン文化が創出されていく様と、それらの文化が抱えていた問題を浮かび上がらせている様などを明らかにした。また、樋口一葉作品のメディアミックス現象について、特に視覚メディア化された事象に着目して考察した。 3)ラジオ・映画などの多様なメディアの誕生と、文学表現・「受け手」との関係性について論じていた同時期の評論(大熊信行らによるもの)の調査、分析を行った。これは申請時の計画にはなかったものだが、メディア・ミックス現象と「大衆」との関わりを考える上で、重要な視座を得ることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)「現代大衆小説全集」と講談との関わりについての基礎調査と、調査表の作成を進めている。 2)個別的な事象分析として、樋口一葉作品のメディア・ミックス現象に関する講演を行うとともに、論考を発表した。また、菊池寛の諸作品に関する論考も、近日中に公刊予定である。 3)新たなメディアが登場する中で発表されていた評論において、読者(享受者)がどのように考えられていたのかについて調査・分析を行い、研究会において報告した。
|
Strategy for Future Research Activity |
引き続き、「大衆小説」と「講談」との関係の基礎的な調査を行う。調査の範囲を特徴的な雑誌メディアにも拡げ、調査の結果を調査表などまとめることで成果を公表していきたい。平行して、個別的な事象に焦点化した調査・分析を行う。研究を推進する中で、「大衆文学」と反照する立場にあった文学の在り方や、多様化するメディアについて論じた評論等も視野に入れる必要があることがわかってきたため、引き続き課題としていきたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
復刻雑誌のマイクロフィッシュの購入を予定していたが、国立国会図書館所蔵資料のデジタル化が進んだことと、2014年1月から提携図書館において閲覧することが可能になったことなどを踏まえて、購入を見合わせた。同じ理由から、国立国会図書館関西館で調査が可能になった資料も多く、旅費を削減できた。「その他」として、複写費を計上していたが、学内規定により取り寄せ資料の複写費を科学研究費から計上することが困難であったため、使用が叶わなかった。 平成26年度以降はさらに調査対象を広げるため、関係図書・資料の購入費として用いたい。また、複写資料を効率的に用いるため、デジタル画像資料として保存・整理することを目的とした備品を購入したい(ドキュメント・スキャナーなど)。また、希少図書・資料などは、引き続き、各図書館・資料館等での調査が必要となるため、出張費として使用する。
|
-
-
-
-
[Book] 京都近代文学事典2013
Author(s)
越前谷宏、田中励儀、西川貴子、堀部功夫、三谷憲正、笹尾佳代( 共著 )
Total Pages
428(49,120,121,122,138,217,292,318,354)
Publisher
和泉書院