2013 Fiscal Year Research-status Report
〈近代説話〉の研究-明治大正期の実録、実記、講談本から歴史小説、大衆文学へ-
Project/Area Number |
25770088
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
奥野 久美子 大阪市立大学, 文学研究科, 准教授 (50378494)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 近代説話 / 芥川龍之介 |
Research Abstract |
本研究初年度である平成25年度は、〈近代説話〉研究のとりかかりとして、本研究の申請書において研究目的、研究計画の欄にも掲げた、細川ガラシャをめぐる諸言説について調査研究をした。また、同研究計画では言及していなかったが、いわゆる古典説話の重要人物である平中(平貞文、好色説話で知られる)についても近代小説にからめて研究を行った。 具体的には、まず、ガラシャを主人公とした芥川龍之介の「糸女覚え書」(「中央公論」大一三・一)の作品研究である。明治大正期の細川ガラシャをめぐる諸言説を、小説、戯曲、偉人伝、史伝、教訓書などジャンルを問わず検証し、芥川独自のガラシャ像がどこにあるのかを結論づけた。この研究の成果は論文として平成25年9月に論文集の編集委員会へ入稿し、平成26年4月、刊行された。 次に平中説話については、同じく芥川龍之介の「好色」(「改造」大一〇・一〇)の主人公であり、芥川独自の平中像をさぐるべく研究を行った。ただしこの作品の書かれた時代、「平中物語」は発見されておらず、平中好色説話は今昔物語集等でわずかに知られるのみであったため、同時代の平中像の検証はできない。そのため上記の「糸女覚え書」とは研究手法を変え、本作では主人公が典型的近代知識人として描かれていることに着目、明治大正期の知識人像と平中を重ねる形で検証し、本作の平中像を導き出した。この研究の成果は平成25年7月に学会にて口頭発表し、発表をもとに論文として平成26年1月に学会誌編集委員会に投稿、受理され、平成26年4月現在、編集中である。 以上が平成25年度の具体的な研究成果であるが、本課題のとりかかりとして二つの〈説話〉に取組み、また複数の研究手法で作品分析に挑んだことは大きな意義があり、次年度以降も研究対象や状況に応じ、柔軟に〈近代説話〉の研究をすすめてゆく所存である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の初年度に二つの〈説話〉に取組めたこと、そしてそれらの成果を論文化できたこと(一本は刊行準備中で未発表であるが、入稿済みである)は順調と考える。申請時の研究計画で平成25年度にとりかかる予定とした作品とは異なるものをテーマとしたが、一年で一~二つのテーマ(素材)を検討し論文化することを目標にしているため、次年度以降で研究計画で言及した諸素材に取り組んでゆく予定であり、本年度としての目標は達成している。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの達成度」欄に記載のとおり、研究計画で平成25年度にとりかかる予定とした作品とは異なるものをテーマとしたが、今後もひきつづき研究計画で言及した諸素材をはじめとする、歴史上の人物をめぐる〈近代説話〉の実態把握と検証、文学作品との相互関係を明らかにすべく研究に取り組んでゆく予定である。研究方法は申請時の計画に沿い、その都度テーマに応じて柔軟に対応する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題申請時の予定では平成26年度の国際芥川龍之介学会の開催地は台湾となっていたが、平成25年度の同学会大会において、開催地がスロヴェニアに変更された。そのため、台湾よりは旅費がかさむことになり、わずかではあるが平成26年度の旅費の足しにするため、年度末に残った予算残額を使わずに残すこととした。 上記理由により、残額の13,487円は平成26年度の学会参加のための旅費の一部として使用する予定である。
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