2014 Fiscal Year Research-status Report
〈近代説話〉の研究-明治大正期の実録、実記、講談本から歴史小説、大衆文学へ-
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25770088
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
奥野 久美子 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 准教授 (50378494)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 芥川龍之介 / 説話 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度には、まず前年度に入稿していた論文「「糸女覚え書」-〈烈女〉を超えて」が所載された単行本『芥川龍之介と切支丹物』(翰林書房、2015年4月)が刊行された。この研究は芥川龍之介が細川ガラシャを主人公として書いた短篇を論じたものであり、明治大正期におけるガラシャ像を検証する中で芥川の当該作品の独自性を意味づけた。これは本研究課題の申請時に研究計画の中に入れていた研究対象であり、本研究課題の成果の一つである。 また第9回国際芥川龍之介学会(平成26年8月25,26日、於リュブリャナ大学、スロヴェニア)における口頭発表にて、「芥川「俊寛」の仏典」と題して口頭研究発表を行った。この研究の対象は、「平家物語」から現代まで、さまざまな文学や演劇に取り入れられ、まさに〈説話〉となっている俊寛僧都であり、俊寛を芥川龍之介が描いた短篇「俊寛」の作品研究である。今回の研究では芥川がどのような仏典をもとに独自の俊寛像を造型したかを明らかにした。研究の過程で、芥川が愛しよく利用した説話集「今昔物語集」のあるテキストが重要な材源となっていることが明らかになり、古典説話から〈近代説話〉への具体的つながりを解明することができた。本研究については、発表後、口頭発表では足りなかった部分を補って論文とし、「芥川「俊寛」と『攷証今昔物語集』」として同学会の学会誌へ投稿した。現在、査読審査中である。 本年度の本課題の研究成果は上記のように発表論文1本、研究発表1本、審査中投稿論文1本、である。申請時の研究の目的、研究実施計画に沿った研究をなしえたものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究成果のうち、論文発表の1件は「研究の目的」にも具体名を挙げた細川ガラシャについて研究を成し得たものである。また、口頭発表および審査中論文で扱った俊寛については、「研究目的」や「研究計画」には掲げていなかった対象であるが、古典説話から〈近代説話〉へ、という流れを語るには最適な研究対象であり、26年度の上記研究によって、具体的にその流れが明らかにできた。このため研究はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後もこれまで同様に研究課題に沿って研究を続けるつもりである。具体的には、申請時に「研究目的」や「研究計画」に挙げた石川五右衛門や一休の説話化について、近代文芸を中心に調査研究をすすめている。
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[Presentation] 芥川「俊寛」の仏典2014
Author(s)
奥野久美子
Organizer
第9回国際芥川龍之介学会
Place of Presentation
リュブリャナ大学(スロベニア共和国)
Year and Date
2014-08-26 – 2014-08-26
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