2013 Fiscal Year Research-status Report
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25770089
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Onomichi City University |
Principal Investigator |
岸本 理恵 尾道市立大学, 芸術文化学部, 講師 (10583221)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 国文学 / 書誌学・文献学 / 古典籍 / 藤原定家 / 監督書写 |
Research Abstract |
藤原定家による監督書写についての定義は、冷泉家時雨亭文庫の私家集が多く公開される中で行われたものであった。しかし、藤原定家の監督書写本は早く他家へ出たものや切られて出たものなどもあり、こうした写本も総合して、写本間に見られる共通点や類似点を分析・分類した。調査する写本は私家集から始まったが、私家集の範囲を越えて歌物語や歌学書など定家が書写に関わったことが確認できるものを広く扱った。 その結果、定家監督書写本私家集の特徴と定義づけられていた事柄は多くの古典籍にも同様に見ることができ、定家の書写活動においては様々な古典籍を区別なく書写していたことが判明した。しかも、家中の者を用いて書写を完成させた写本のうち歌学書では、内容に対する定家の疑問点や考察を行間や余白部分に書き入れた箇所が見られた。また、私家集の書写に見られる筆によって抜書きさせた資料をもとに定家が覚え書きのようなものを書き継ぐような形で残る写本などもあった。定家監督書写本には定家が勘物や奥書を加えたり本文の訂正を書き入れたりすることはこれまでにも知られていたが、歌学書等に見られる定家の書入れは、単に本文を訂正するものではない。これらの書入れは定家の和歌や古典の研究そのものと言えるものであり、監督書写した写本をもとに研究をおこなっていたということがわかる。 これらの報告とその意味づけについて、「定家監督書写本私家集の周辺」と題して口頭発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
私家集の分類をより充実させていくとともに、私家集以外の資料についての分析と考察を行うことができた。私家集以外の資料について、当初の計画では予備調査に留め翌年に分析を行う扱う予定であったが、予備調査の中で私家集との関係が深いと考えられる特徴を多く見出すことができたためである。また、その意義も併せて一定の考察を加え口頭発表を行ったので、順調と言えるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画どおり、私家集以外の資料についての考察をさらに深めていく。具体的には、資料ごとに異なる作品の性質を書誌的特徴併せながら定家の書写活動の様子を明らかにし、多くの古典籍に広く適応させることのできるあたらしい定義をおこなうことをめざす。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
私家集を中心とした研究はこれまでにも行ってきたものであり比較的資料も整備されていたが、あらたに私家集以外の資料へと範囲を拡大していくため、これまでのものとは別に作品ごとの基本図書等の整備が必要となるため。 当初の計画通り進行する予定であり、伝本調査のための旅費、文献複写費、物品購入費のほか、データ入力作業の委託を予定している。ただし、上記理由のとおり物品購入費については当初の計画よりも増額することとなる。
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