2015 Fiscal Year Research-status Report
井伏鱒二作品における地方表象の研究―1930-50年代を中心に
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25770094
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
塩野 加織 早稲田大学, 文学学術院, 助教 (80647280)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 井伏鱒二 / 近代文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度から、井伏の初期の文学活動における表現生成の過程と、その作品群における地方表象のありようを継続的に分析・考察してきたが、本年度は、その成果の一部を論文にまとめて発表した(塩野加織「井伏鱒二の文壇進出再考――『三田文学』版「鯉」および「たま虫を見る」を視座として――」、『国文学研究』第178集、pp.75~pp.87、2016年3月)。この論文では、井伏が文壇登場を果す端緒となった小説二作(「鯉」および「たま虫を見る」)を取り上げ、そこでの叙述の特徴を、改稿との関わりから論じた。両作において改稿を繰り返しながら生成されていった表現の方法は、のちの初期代表作(「谷間」)のなかで統合して用いられており、それが当時新しい文体として認知される要因にもなっていたことを明らかにした。また、当該論文には含めることができなかったが、今回析出した叙述の特徴は、「田舎的または地方的」でありながら「モダニスト」である、という井伏に対する当時の評価言説にも影響を与えていたことを資料面から確認できた。この点については、今回の論文内容を踏まえてさらに考察を進める予定である。 以上のことから、当初計画していた1920年代後半~30年初頭の文学状況とそこに参入していく井伏の創作活動の特色については、ある程度明らかにすることができた。ただしその一方で、2015年度に実施予定であった1935年以降の対象作品に関する調査・考察についてはほとんど進めることができなかった。特に、基礎資料の収集を目的としていた出張を断念せざるを得なかったため、計画を見直す必要が生じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初予定していた国内・海外それぞれの資料調査を実施することができなかった。特に米国での文献調査は、校務の都合により訪問先との日程が折り合わず見送らざるをえなかったため、その分の遅れが生じてしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
2015年度に積み残した調査を2点に絞って進める。まず1点目は、2015年度内に実施できなかった占領期~1950年代の井伏作品に関する英訳調査を行いたい。次に2点目は、ふくやま文学館所蔵の井伏自筆原稿の調査を行うことである。
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Causes of Carryover |
当初予定していた国内・海外それぞれの資料調査を実施することができなかった。特に米国での文献調査は、校務の都合により訪問先との日程が折り合わず見送らざるをえなかったため、使用額に変更が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
資料調査のための出張費を主な用途とし、関連資料購入費・複写代としても一部使用する予定である。
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Research Products
(1 results)