2016 Fiscal Year Annual Research Report
A Study on Expressions of Regional Specificity in Ibuse Masuji's works: 1930s to 1950s
Project/Area Number |
25770094
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
塩野 加織 早稲田大学, 文学学術院, 助教 (80647280)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 日本文学 / 近代 / 井伏鱒二 / 翻訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度の2016年度は、前年度までに実施できず積み残していた1945年以降1950年代までの井伏作品に関する英訳調査とその分析を中心に研究活動を進める一方で、成果発表の準備を進めた。まず、英訳調査に関しては、敗戦以後1950年代にかけて、井伏鱒二の著作がどのように英訳されていったかを調査しデータ化した。その際に、米国メリーランド大学にあるプランゲ文庫での占領期資料の調査も実施した。また、井伏作品の英訳調査と並行させて、1950年代を中心とする日本国内の翻訳事業に関する同時代資料を収集しその分析を進めた。この50年代の翻訳事業と井伏作品との関わりを考察する上で、とくに重点的に取り上げたのは英文季刊誌『ジャパン・クォータリー』である。同誌は、井伏作品の英訳を戦後初めて掲載した雑誌だが、一方で当時の翻訳事業との連関があることが判明した。そこで本研究では、この雑誌の特徴とそこで紹介された翻訳作品についても分析を行い、50年代の翻訳事業における井伏作品の位置づけについて考察をすすめた。その研究成果の一部は、論文にまとめることができた(塩野加織「雑誌『ジャパン・クォータリー』にみる一九五〇年代の翻訳事業とその断層:「遙拝隊長」と「陰翳礼讃」の英訳をめぐって」※詳細は研究発表参照)。この論文では、50年代に活躍する複数の米国人翻訳者に焦点をあてながら、その翻訳事業のなかで井伏作品が占める位置を論じた。さらに、井伏鱒二の地方表象と翻訳との関係性については、2017年7月2日に開催される日本文学協会研究発表大会(於・新潟大学)において、この研究成果を発表することが確定している。
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