2013 Fiscal Year Research-status Report
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25770100
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
小山 順子 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (20454796)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 日本文学 / 中世文学 / 禁裏文芸 / 後土御門天皇 |
Research Abstract |
和歌文学会第59回大会(2013年10月13日於関西大学)で、「室町時代後期和歌における『伊勢物語』摂取と注釈―三条西実隆と後柏原天皇をめぐって―」と題した口頭発表を行った。この発表は室町時代後期の禁裏文芸において、『伊勢物語』がどのように受容され、新たな表現を生み出したか、そしてそれは、前時代までのものとどのような違いがあるのか、という点を明らかにしたものである。 本発表で中心においた三条西実隆とは、『伊勢物語』注釈史において、『伊勢物語惟清抄』他の注釈書を残した人物であり、さらには当時の禁裏文芸の指導者的人物であった。三条西実隆と、後柏原天皇の和歌表現における『伊勢物語』受容の方法を分析し、前時代とは明らかに異なる視点から原典の詞に注目し、抽出していることを指摘し、それが注釈の場を経由したものであることを指摘した。注釈と和歌表現の創出との双方から考察した研究発表として、本発表は、室町時代の禁裏文芸のあり方を端的に示すものとなった。 また、三条西実隆の書写を経た本である天理図書館蔵『俊成家集』に関する論文「天理図書館蔵『俊成家集』考」(『ビブリア』第140号、2013年10月)と、室町時代にも数多く襲用され、また連歌の賦物にも用いられた百首組題である『内裏名所百首』について、「藤原定『内裏名所百首』四季歌考-伝統と独創性-」(『京都大学国文学論叢』第30号、2013年9月)を発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度で、関連資料の閲覧・調査・収集を進め、当該研究に関する口頭発表を全国学会で行うことができた。特に、関連学会である和歌文学会の全国大会で口頭発表を行い、現時点での研究に対する斯界の意見を得られた点は、今後の発展に大きな意義があったと考えている。但し、平成25年度内で論文発表まで至ることができなかった点は、やや遅れがある。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度で収集した資料の中で、京都大学国文学研究室・中国文学研究室 編『室町前期和漢聯句作品集成』(臨川書店、平成22年)に収載されていないものについて、翻刻・解題を発表する予定である。なお上記の書は、和漢聯句研究における基礎資料となるものであり、これの補遺を発表することは、基礎資料の補強として有益である。さらに、その資料に関連する論文を、現在執筆中である。 また、本研究課題の重要な視点として、歌壇研究を挙げていた。この点について、新見が得られたので、今年度中に関連学会で口頭発表を行う予定である。 資料の閲覧・調査・収集については、平成25年度に引き続き、続行してゆくこととする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年4月から現在の所属先である国文学研究資料館に着任し、必要であると考え購入予定であった書籍が館内に揃っており、購入の必要が無かった。そのため、書籍代にあてる予定であった金額が残ることとなった。さらに、資料調査のために国文学研究資料館に複写を依頼する予定であったマイクロフィルムの閲覧が館内でできるため、複写作成にあてていた予算が大幅に減額し、使用額との差異が生じた。 平成26年度は、歴史書や漢籍などの書籍を購入する予定である。そのため、平成25年度とは異なり、書籍購入費が増額する。また、学会参加や資料閲覧・調査、成果発表にかかる諸費用が25年度以上にかかることが予想され、国文学研究資料館以外の諸機関への複写依頼を出す予定であるため、複写作成費が増額する。これらの用途に、平成25年度に未使用であった額をあてる計画を立てている。
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