2015 Fiscal Year Annual Research Report
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25770101
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Research Institution | Notre Dame Seishin University |
Principal Investigator |
木下 華子 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 准教授 (10609605)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 方丈記 / 発心集 / 無名抄 / 和歌 / 鴨長明 / 源家長日記 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、最終年度に当たるため、これまでの研究成果を論文・発表として公表することに重きをおいた。 昨年度までの研究成果の一つとして、『源家長日記』の注釈を作成していたが、これをもとに、論文「『源家長日記』と始発期の後鳥羽院像」(『国語と国文学』 93巻4号、2016年4月)を発表した。本論文は、『新古今和歌集』の成立過程や後鳥羽院歌壇の様相をうかがう重要な資料として位置づけられてきた『源家長日記』について表現分析を行い、作品の性質・文学史的意義を考察するものである。従来、後鳥羽院歌壇における重要な和歌の催しに関する記述で筆者の記憶違いや誤りと考えられてきたものは、同時代に共有された表現史をもとにした意図的な虚構であり、そのような操作が行われた必然性は、治天の君としての後鳥羽院像の造型と院の聖代を言祝ごうとする目論見にあることを明らかにした。 また、『発心集』については、「『発心集』蓮華城入水説話をめぐって」と題した研究発表を行った(国際日本文化研究センター共同研究会「説話文学と歴史史料の間に」、2016年3月)。『発心集』板本・神宮文庫本に収載される「蓮華城」という出家者の入水について、古記録(『顕広王記』『百練抄』)の記事と比較分析を行い、史実上の蓮華城入水がいかにして説話化・文学化されるのかを追った。蓮華城の入水は安元2年(1176年)8月15日に敢行されたが、当時、かなり衝撃的な事件として人々に記憶された仲秋の名月の日の集団入水であったにも関わらず、『発心集』はそれを意図的に捨象し、入水往生失敗譚として再構成を行っている。本研究の核となるテーマである「記録」と「文学」の関係に直結するもので、事実や事件が文学となるに際し、どのような焦点化が行われ、また捨象が行われるのかという現場を明らかにしたものである。
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Research Products
(2 results)