2013 Fiscal Year Research-status Report
『イギリス国民伝記辞典』にみられるジェンダー・イデオロギーとその背景
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25770106
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
長谷川 雅世 高知大学, 教育研究部人文社会科学系, 講師 (30423867)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | イギリス国民伝記辞典 / ヴィクトリア朝 / ジェンダー / レディ・トラヴェラー |
Research Abstract |
本年度は研究初年度にあたるため、資料取集が中心となった。 まず、最初に、『イギリス国民伝記辞典』(以降DNBと表記)全般に関する先行研究を渉猟し、従来の見解を再確認した。その結果、DNBがヴィクトリア朝的イデオロギーを反映しているか否かについて、帝国主義や道徳観に関しては従来の批評家の意見は二分しているが、ジェンダーに関してはヴィクトリア朝的であるという意見で一致していることが再確認された。同時に、ジェンダーに関してヴィクトリア朝的だというこれまでの主張は、伝記記事の女性寄稿者の数や単独で伝記記事の主題となった女性の数の少なさが主たる根拠であり、個々の伝記記事の記述には十分な考察がなされていないことも明らかになった。個々の記事の詳細な分析を通してDNBのジェンダーに関する特徴を解明しようとする本研究の意義が改めて確認できた。 夏には英国へ渡り、大英図書館で資料収集を行った。今回は『アシニーウム』誌に掲載されたレズリー・スティーヴンによるDNBに関する著述などの日本国内で入手困難な一次文献と、本研究で分析対象の1つとなるヴィクトリア朝時代を中心としたレディ・トラヴェラーに関する二次文献を収集した。 帰国後は、英国で収集した資料を整理分析した。同時に、1912年までにDNBに掲載されたレディ・トラヴェラーの伝記記事と2004年の『オックスフォード版イギリス国民伝記辞典』に掲載された同人物の伝記記事を比較、分析した。その結果、前者の伝記記事の構成や内容や表現には、「家庭の天使」や「性的役割分業観」や「家父長制」といったヴィクトリア朝的ジェンダーイデオロギーが顕著に表れていることが分かった。そしてこの成果を10月に京都府立大学英文学会にて「The Dictionary of National Biographyにおけるジェンダー-レディ・トラベラーを中心に」という題で口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『イギリス国民伝記辞典』全般に関する先行研究を整理分析する作業はおおむね終了した。分析対象となるレディ・トラヴェラーの伝記記事に関しても、『イギリス国民伝記辞典』と『オックスフォード版イギリス国民伝記辞典』との比較はほぼ完了した。ただし、本研究の意義や重要性をより明らかにするためには、『イギリス国民伝記辞典』以外の範囲にも視野を広げる必要があり、また、本研究で扱う伝記記事の主題となっているレディ・トラヴェラーをより限定し、さらに詳細な考察をするべきであることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、主として作業効率の理由から、初年度に行う予定であった作業の半分と研究2年目に行う予定であった作業の一部を行った。そして、本年度の研究で、本研究の意義や重要性をより明らかにするためには、『イギリス国民伝記辞典』以外の範囲にも視野を広げる必要があり、また、本研究で扱う伝記記事の主題となっているレディ・トラヴェラーをより限定し、さらに詳細な考察をするべきであることが分かった。それゆえ、2年目はこの点を修正してレディ・トラヴェラーを中心に研究を継続して論文投稿を行い、レディ・トラヴェラーの伝記記事に関する研究については完了させる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究分担者として他の科研費研究も行うことになり、その研究資料取集先が本研究と同じ大英図書館であり、1回の渡英で2つの研究の資料収集を行うことができ、旅費の支出が当初の計画よりも少なくなったため。 ポンドが高くなっているために、次年度の英国での資料取集には、当初の計画よりも多くの予算が必要になると思われる。それゆえ差額は、主として海外旅費に使用する予定。
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Research Products
(1 results)