2013 Fiscal Year Research-status Report
ウィリアム・フォークナー文学における白人性とミンストレル的想像力の研究
Project/Area Number |
25770108
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
永尾 悟 熊本大学, 文学部, 准教授 (80389519)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | フォークナー / アメリカ南部 / 白人性 / 人種 |
Research Abstract |
本研究の目的は、白人/黒人の人種的相互作用によって構築されたアメリカ南部白人性の危うさを暴き出すフォークナーの文学的想像力をとらえることである。人種の問題が黒人性と結び付けて論じられることが主流であったフォークナー文学について、人種としての白人性に焦点を当てながら再考する試みである。 平成25年度は、南部大農園制度の歴史・社会構造と白人性との相関性に着目し、Go Down, Moses(1942)におけるアイク・マッキャスリンの白人意識について考察した。その中で、南部白人男性としてのアイクの自己意識やふるまいが黒人奴隷の末裔や先住民といった人種的他者の存在を通して構築されるプロセスについて論じた。その成果として、日本ウィリアム・フォークナー協会第16回全国大会において個人発表を行い、その内容は『フォークナー』第16号(松柏社)に掲載された。 また、26・27年度の研究準備として、ミシシッピ州のサザン・ミシシッピ大学図書館へ赴き、20世紀初頭南部の白人性とフォークナーに関する研究資料の閲覧および複写を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
25年度の計画に基づき、Go Down, Mosesにおける南部大農園制度と白人性の問題について研究を遂行し、研究成果を発表することができた。また、26年度以降の研究に向けての資料収集を予定通り実行した。
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Strategy for Future Research Activity |
26・27年度は、Go Down, Moses以降のフォークナー作品における白人性の問題について研究を進めていく。また、作家フォークナーの白人性構築について、エッセイ、書簡、スピーチを中心に分析する。特に1940年代後半から50年代において繰り返し人種差別の不当性を表明した点について、公民権運動という時代性、および、文学作品との相関性という観点から考察する。 これらの研究テーマについて、積極的に学会等での発表を行い、そこで指摘された意見を反映させながら論文にまとめたい。また、アメリカの大学での研究調査・資料収集も時間が許す範囲で実施する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
25年度は購入予定だった図書の一部が絶版などにより入手きなかったため、物品費に10万程度残額が生じた。 また、旅費については航空券などを格安で入手できたため、使用予定額よりも数万円安く収まった。 物品費については、絶版により購入できなかった図書のリプリント版の購入に充てる予定である。 旅費については、国内での学会発表のために使用する予定である。
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