2014 Fiscal Year Research-status Report
ウィリアム・フォークナー文学における白人性とミンストレル的想像力の研究
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25770108
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
永尾 悟 熊本大学, 文学部, 准教授 (80389519)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ウィリアム・フォークナー / 白人性(ホワイトネス) / アメリカ南部 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ウィリアム・フォークナーの作品における白人登場人物の意識やふるまいを考察しながら、歴史的に構築されたアメリカ南部の人種概念について、その価値基準となってきた白人性の意味を問い直す試みである。フォークナー研究やアメリカ南部文学・文化研究においては、黒人性に焦点が当てられがちだった人種の問題について、白人性を考察の対象とすることによって、先行研究では明らかにされなかった論点を示したい。 26年度は、ウィリアム・フォークナーのIntruder in the Dust(1948)における白人性について、1940年代後半のアメリカ南部の時代状況や言説、フォークナー自身も関わっていた映画化にまつわる諸問題を踏まえながら研究を進めた。この作品はな歴史的に構築された南部白人性をアメリカ国家の同時代的コンテクストにおいてとらえるものであるという前提に立ち、国際的な名声を得つつあったフォークナーの南部作家としての立場がどのように映し出されているのかを明らかにした。研究の成果については、熊本大学英文学会第58回大会で発表を行い、その内容をもとに執筆した論文が所属大学・学部の論集『文学部論叢』第106号に掲載された。 また、27年5月に所属学会において研究課題に関するシンポジウムを主催するため、25・26年度の研究内容をまとめ直した原稿を準備しつつ、他の3名のパネリストと研究内容の検討を行った。 シンポジウムおよび27年度の研究の準備のため、ニューヨーク市にあるションバーグ黒人文化センターにて1週間ほど資料収集や研究を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ほぼ研究計画書通りに研究を遂行し、その成果を学会発表および研究論文というかたちで発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
25・26年度では主に1940年代のフォークナーの作品について研究を進めたが、最終年度にあたる27年度は、1950年代のエッセイ、手紙、スピーチなどを研究対象とする。それにより、公民権運動の中でアメリカ南部の人種問題が国家的な課題として共有されるようになった時代状況において、アメリカを代表するノーベル文学賞作家になった彼が、南部白人男性作家としての自己意識をどのように表現したのかを考察する。さらに、50年代は黒人作家たちがフォークナーについてのエッセイなどを書くようになったが、これらの内容に対するフォークナー自身の反応を読み解きながら、彼の南部白人性の構築について考察したい。
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Causes of Carryover |
物品費については、図書の購入を科研費以外の研究費でまかなうことができたために余剰が生じた。旅費については、学務の関係で出張の中止あるいは期間の短縮を余儀なくされることがあり、予定金額を使うことができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費及び旅費の繰り越しについては、研究に必要な洋書や事典の購入、および、学会や研究会参加の出張旅費にあてる。特に27年度は最終年度にあたるため、成果の発表と情報収集のためにも学会や研究会などへの参加が多くなる見込みであり、予定額よりも旅費が多く必要だろう。
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