2014 Fiscal Year Research-status Report
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25770109
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
下條 恵子 九州大学, 言語文化研究科(研究院), 准教授 (30510713)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アメリカ文学 / 英米文学・英語圏文学 / 社会思想 |
Outline of Annual Research Achievements |
1:日本英文学会第86回大会でアメリカ文学シンポジウム「ハイウェイとスモールタウンのアメリカン・ナラティヴ」の講師を担当(H26年5月25日)。旅をモチーフとした小説を「移動」「定住」という二つの視点から読解すると、そこにはヘシオドスをはじめとする西洋の古典文学から続く「冒険」と「日常的勤労」という二つの経済活動および職業倫理の対立が読み取れること、またアメリカに発現したピューリタン的経済倫理が加わることによって、この対立軸に揺らぎが生じるという発表を行った。 2:ナサニエル・ホーソーン協会九州支部大会で個人発表「ホーソーンを捏造する―『ブルックリン・フォリーズ』における『緋文字』手稿の捏造について」を行った(H26年12月6日)。アメリカ文学の代表作品『緋文字』(1850)の原稿を捏造して大金を稼ぐ、というエピソードが登場するP. オースターの『ブルックリン・フォリーズ』(2005)を取り上げ、アメリカ社会が市場経済化した19世紀から9.11を経験した21世紀までの時間軸の中で、文学作品という文化資産が経済資産へと変化していったアメリカ文学共同体の変遷について考察を行なった。 3:福岡大学アメリカ文学研究会で「アメリカン・ユートピアの経済学」という研究講演を行った(H27年1月31日)。16世紀イギリスのトマス・モアに始まるいわゆる「ユートピア文学」を現代アメリカ文学作品までたどりながら、そこに見られる文筆家、作家たちの経済観念の変化について論じた。ユートピア思想と親和性のある社会主義思想から、互助性の強い保険思想への変化など、大変興味深い理念的推移が文学作品の中にも描かれていることを述べた。 4:福岡女子大学アメリカ文学研究会例会における研究成果発表。同研究会にて、課題研究の進捗状況を定期的に報告し、研究協力者をはじめ、会員の方々と意見交換している。H26年度は計9回開催。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度、十分な研究を行うことがかなわなかった19世紀アメリカ文学作品の読解分析、論点整理やそれ以前の西洋文学に関する考察などを幅広く行うことができ、成果を研究発表の形で報告することができた。また、学会や協会での研究発表ということで様々な研究者の方々から有益なコメントを得ることができ、研究課題のために入手すべき資料、新しく調査すべきトピック等について情報を得ることができた。ただし、契約神学とアメリカの精神史に関する文献についての海外での資料収集、現地調査に関しては、スケジュールの都合上、行なうことができなかったので、H27年度はこれを積極的に行なう。
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Strategy for Future Research Activity |
契約神学と保険ビジネスの発展についての資料収集と分析を行ない、そこから見出せるアメリカの経済的理念の変遷を、この2年間に発表した研究内容と照らし合わせた上で、「保険」「契約」「共同体」についての論考として複数の論文にまとめる予定である。
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Causes of Carryover |
学内業務の関係で、予定していた海外調査およびそこでの資料購入等を実施できなかったため。また、研究成果報告は日本語での発表が中心だったので、予算として計上していた英文校閲費も不要だったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実施できなかった海外調査および、研究成果の英語での報告を複数予定しているため、繰り越し分はそのための旅費及び英文校閲費用に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)