2019 Fiscal Year Annual Research Report
Transatlantic theatre publishing and the case of Samuel French ltd. 1830-1891
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25770110
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Research Institution | Kushiro Public University of Economics |
Principal Investigator |
松浦 愛子 釧路公立大学, 経済学部, 准教授 (70457919)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | トランスアトランティック / 19世紀英国演劇 / 19世紀米国演劇 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度となる今年度は、先行文献の整理とともに、これまでの研究成果を単著としてまとめるための執筆作業を開始した。 出版予定の単著はマンチェスター大学に提出した学位請求論文(博士論文)の翻訳が元になっているが、本研究課題の背景となる英米両国の劇場文化の関わりについての調査結果を反映させたものである。 19世紀英米の劇場の関係性は、米国による英国の模倣による一方通行ではなく、双方向であった。19世紀トランスアトランティック劇場を代表するアイルランド出身の劇作家ブシコーは、英国の劇場を近代化した。彼の劇場における活動から、19世紀のトランスアトランティックな文化空間の存在を確認できる。具体的には、英米間の著作権法の相互交流のため、劇場における作品の興行と劇作家の作品の出版が大西洋を隔てた米国の劇場のニーズに大きく影響されていた。特に、19世紀劇場においては、劇のテクスト生成において、速記者の関与など当時の情報伝達技術と通信網を利用した劇作生産の実態があったことは、重要である。また、これまであまり注目されてこなかった点として、アイルランド出身の劇場関係者らが、米国において英国の文学作品を劇化、翻案することによって英国文化の担い手として活躍し、英米両国の劇場文化の均質化に貢献していた。 研究成果は今年度中に単著の原稿を完成する予定で作業を進めており、来年度中には活字とする予定である。
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