2013 Fiscal Year Research-status Report
異なるものの痕跡:アメリカン・ルネッサンスにおける翻訳の文化的役割
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25770113
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Wayo Women's University |
Principal Investigator |
古屋 耕平 和洋女子大学, 言語・文学系, 助教 (70614882)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アメリカ文学 / 19世紀 |
Research Abstract |
平成25年度前半には、主にハーマン・メルヴィルと翻訳の関係についての研究を行い、論文「アメリカン・ルネッサンスと翻訳―メルヴィルの場合」を日本メルヴィル学会『スカイ・ホーク』に発表した。同論文では、19 世紀半ばから次第に顕著となる合衆国の英語化政策についての資料を基にした歴史的考察と、後期作品におけるメルヴィルの翻訳思想の関係について論じた。 また、翻訳理論研究の一環として、2013年6月に台湾で開催されたThe First International Deleuze Studies in Asia Conference において研究発表を行った。本発表では、メルヴィル作品、及びフランスの哲学者ジル・ドゥルーズのメルヴィル作品読解に見られる反本質主義的言語観について論じた。海外の哲学及び文学研究者から幅広いコメントを得ることができ、本研究を進める上での大きなヒントを得た。 年度後半には、ナサニエル・ホーソンと翻訳の問題について調査、執筆を行った。本研究はテキサスA&M大学に提出される博士論文の一部にもなるため、当初の予定では、夏休みないし春休みに指導教官の19 世紀アメリカ文学研究家Larry J. Reynolds教授と会談し具体的な助言を貰う予定であったが、スケジュールの問題で断念した。その代わり、3月末に一章分の原稿を教授にメールで送付した。論考の一部は、2014年6月に合衆国マサチューセッツ州における国際ホーソン学会において発表予定である。また、同教授も基調講演者として同学会に出席するため、会場において会談し、本研究についての指導を受けることも承諾済みである。さらに、会場周辺はホーソン及びメルヴィルと縁の深い地で、地域の公立図書館や記念館に同作家たちに関する一次資料が多く所蔵されているため、学会参加者と共同でそれらの場所を訪れ、資料の収集にあたる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
全体として、「おおむね順調に進展している」と十分に評価できる。 まず、25年度前半にメルヴィルと翻訳についての研究を行い、研究成果を学会誌に投稿し、年度内に出版できたのは、研究実施計画通りである。 次に、翻訳理論研究の面でも、ドゥルーズに関する国際学会において発表し、世界中の研究者と様々な意見交換を行い、そこから得られた考察をメルヴィルに関する論文や、その後の研究に反映させたが、これも研究実施計画通りである。 そして、年度後半には、ホーソンと翻訳についての研究を行ったが、こちらも博士論文の一章分に相当する原稿を書き、指導教官に送付することができたという意味で、ほぼ研究実施計画通りであると言える。もう1セクション分付け加えれば、ホーソンと翻訳についての研究は一区切りということになるが、その目処も立っている。2014年6月の国際ホーソン学会における発表後に、発表原稿を含む1セクションを加えて、一章完成の運びとなるはずである。 その一方で、前項にも書いたとおり、夏季あるいは春季休業中に予定していたテキサスA&M大学への調査旅行はスケジュールの問題で断念せざるを得なかった。しかしながら、指導教官であるLarry J. Reynolds教授とはメールでやり取りを行っており、また同教授とは、2014年6月には前述の国際ホーソン学会において会談する予定で、特に計画に大幅な変更があったとは言えない。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、マーガレット・フラー及びラルフ・ウォルド・エマソンと翻訳についての研究を進める予定である。年度末までに、フラーとエマソンについての論考をそれぞれまとめたい。エマソンについてはテクストの調査はかなり進んでおり、既に相当量の草稿を書いているが、それらを分割して、その一部を論文として発表したい。フラーについては、資料を整理しつつ草稿を書き始めることになる。いずれの研究についても、国内外の学会発表における質疑応答を反映させながら修正を加える。また、指導教官とは引き続き連絡を取りながら助言を貰う。必要に応じて、直接同大学を訪れ指導教官等と会談の時間を持つ。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定では、夏休み、あるいは春休みにテキサスA&M大学を訪れ、英文学科博士課程における指導教官の19世紀アメリカ文学研究家Larry J. Reynolds教授と会談し具体的な助言を貰い、同時に同大学図書館所蔵の文献、特に電子化されていないマイクロフィルムのコピーを行う予定であったが、スケジュールの問題で断念した。昨年度から今年度にかけて、既に集めた資料の分析と論文の執筆の方により比重を置いた研究活動を行ってきたため、調査に当てるはずの旅費分が未使用となっている。また、現時点では、本務校所蔵の資料と、既に購入済みの資料の分析が主な作業となっているため、図書購入費が当初の予定を下回った。 平成25年度に予定していたテキサスA&M大学への訪問を、平成26年度(平成27年2月から3月にかけて)行い、前年度未使用分を使用する予定である。図書購入費については、引き続き必要なものについて適宜購入を行う。
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Research Products
(2 results)