2014 Fiscal Year Research-status Report
アルヌール・グレバン作『受難の聖史劇』諸写本における異文と記号の研究
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25770121
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
黒岩 卓 東北大学, 文学研究科, 准教授 (70569904)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 仏文学 / 文献学 / 演劇学 / 詩作技巧 / 写本学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、アルヌール・グレバン作『受難の聖史劇』各写本間の異文の調査を行い、現在まで包括的にはなされていない『受難の聖史劇』のテクスト伝承の調査研究を行うことを目的とする。 今年度は『受難の聖史劇』諸写本のうち、本課題においてH写本に並んで重要な位置を占めるG写本の研究、また同写本と他の写本の比較を重点的に行った。実際の作業としては、昨年度までに行ったテクスト転写を参考にしながら、同写本に保存されているテクストを他写本のそれと詩行単位で比較した。これらの作業を通じ、これまで十分に指摘されてこなかったと思われるG写本の作品伝承上の重要性を、写本の内容に即して具体的に指摘することができた。同時にH写本の伝承上の位置づけに関しても、昨年度より考察を深めることができた。またG写本におけるト書きの内容や分布を検討した結果として、G写本における音楽上の指示と詩形上の変化の密接なつながりを指摘することができた。加えて、各写本における作者名や写字生の名前の記載とテクストの内容との関連についても調査が行われ、『受難の聖史劇』の受容形態に関する考察を深めることができた。 なお本研究課題におけるHおよびG写本以外の写本の調査は、過去になされた校訂版の考証資料に拠っているところが大きかった。しかしより正確な調査を行うためには、HおよびG写本以外のテクストの調査に際にしても極力写本(乃至はその複写)に直接当たる必要がある。来年度以降の課題としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
G写本の調査に関しては、写本のテクストそれ自体の調査、さらには他写本との比較という点でかなりの進展を見た。特にテクスト伝承上の位置づけについては一定以上の説得力をもつ仮説を作り上げるに至った。関係研究者の招へいについては今年度には実施できなかったが、すでに候補者の内諾を取っており来年度あるいは再来年度に確実に実現できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
HおよびG写本のテクスト伝承上の位置づけについて今後も検証を進める。とくに研究課題を遂行する過程で明らかになったG写本の重要性に鑑みて、同写本の研究を重点的に進めたい。また他の写本(とくに今日標準的に用いられている校訂版の底本であるB写本)についてもできるだけ転写を行いたい。
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Research Products
(3 results)