2015 Fiscal Year Research-status Report
現代ロシア文学・文化論におけるシニシズムとナショナリズム
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25770123
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
乗松 亨平 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (40588711)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ロシア文化 / 現代思想 / ナショナリズム / 国際学術交流(ロシア) |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、当初予定どおり、8月に千葉市幕張で開催された中欧・東欧研究国際協議会(ICCEES)世界大会で、本研究課題をめぐるパネル「現代ロシア知識人の生と思想における『否定性』」を組織した。現代ロシアを代表する社会学者レフ・グトコフ(独立系世論調査機関レヴァダ・センター所長)、若手の政治哲学者アルテミー・マグーン(サンクトペテルブルグ・ヨーロッパ大学教授)をロシアから、現代ロシアの文化理論研究で目覚ましい成果を上げているキム・スファン(韓国外国語大学准教授)を韓国から招聘し(キムは別財源)、私自身も発表者として参加した(「現代ロシアの文化理論における抵抗的否定性」)。会場は立ち見が出るほどの盛況となり、本研究課題にとってのみならず、大会自体や、ロシアと東アジアの今後の学術交流にも資するところ大であったと考えている。 また、本研究課題の成果として、著書『ロシアあるいは対立の亡霊:「第二世界」のポストモダン』を刊行した。自分を他者と対立させる思考パターンを軸に、現代ロシアの文化理論を分析した本書では、現代ロシア社会に顕著なシニシズムやナショナリズムを日本のそれらと比較し、専門家の枠を超えて研究成果を伝えることを目指した。後期ソ連から現在まで、ロシアの現代史をひとつのパースペクティヴのもとに通観するような研究書は、日本のロシア文化研究においてまれであり、この分野の発展に貢献するものと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定期間の終了を待たずに成果を著書として発表できたことは、予想以上の進展であると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の成果発表をとおして多くの反応が寄せられ、本研究課題についてさらなる知見が得られた。この知見を反映して最終的な成果をまとめ、私が委員を務めている国際比較文学会文学理論委員会のワークショップ(平成28年7月、オーストリア・ウィーンで開催予定)で発表するため、当初予定より研究期間を延長することとした。
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Causes of Carryover |
平成27年度に行った研究成果発表に寄せられた反応を反映し、本課題の最終的な研究成果をまとめる。私が委員を務める国際比較文学会文学理論委員会の次年度ワークショップが、本研究課題の中心的テーマ(「自己」と「他者」の関係)に関わる「翻訳」をめぐって開催されることとなり、最終的な成果発表の場として最適であると判断した。ワークショップの成果は英語論文集として書籍化の予定であり、本研究課題の成果を国際的に伝えることができる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年7月にオーストリア・ウィーンで開催予定の国際比較文学会文学理論委員会ワークショップでの発表準備と参加旅費に使用する。
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Research Products
(3 results)