2015 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本におけるポール・ブールジェとフランス伝統主義の受容
Project/Area Number |
25770124
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
田中 琢三 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (50610945)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | フランス文学 / 比較文学 / 日本:フランス / 政治思想 / 文献学 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度となる平成27年度は、前年度に引き続き、近代フランスの伝統主義の代表的な作家のひとりであるモーリス・バレスの日本における受容の研究を進めた。そして、その成果を平成27年10月17日に開催された日本比較文学会第53回東京大会(於:東京工業大学)で口頭発表し、その内容を『お茶の水女子大学 人文科学研究』第12巻に『戦時下の日本におけるモーリス・バレスの受容について』(査読有)として掲載した。この論文では、従来の研究では検討がなされていない戦前・戦中のバレスの受容を検討しながら、特に我が国の戦時体制の確立に寄与する目的で翻訳された『科学の動員』の内容と反響を分析した。さらに、第二次世界大戦期に相次いで翻訳・出版されたポール・ブールジェの小説作品、特に1939年に刊行されてベストセラーとなった『死』が、戦時下の日本でどのように読まれたのかを探るため、当時の新聞の書評等の関連文献を調査した。その成果は平成28年6月に開催される比較文学会第78回全国大会(於:東京大学)で発表する予定である。 平成25年度から平成27年度まで3年間の研究期間全体を通じての成果は以下の通りである。まず、日本で出版された近代フランスの伝統主義の文学に関する翻訳書、研究書、論文、新聞の記事等を調査し、特にブールジェとバレスの文献に関しては網羅的なリストを作成した。そして、京都帝国大学教授の太宰施門の著作の検討を通して、戦前のアカデミックな仏文学研究の領域においてブールジェがどのように受容されたのかを解明した。さらに、皇国史観の代表的な歴史家である平泉澄におけるブールジェの伝統主義思想の影響を分析するとともに、第二次世界大戦期にブールジェの小説やバレスの著作がどのように読まれたのかを調査することによって、戦時下の日本の国家主義的イデオロギーにおけるフランス伝統主義思想の知られざる関係を明らかにした。
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