2016 Fiscal Year Annual Research Report
The Sacred Theatre in Seventeenth-Century France
Project/Area Number |
25770125
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
千川 哲生 立命館大学, 文学部, 准教授 (50587251)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | キリスト教 / 悲劇 / イエズス会 / レトリック |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度の研究進捗状況を踏まえて一年延長した結果、本研究の最終年度に相当する。 前年度から引き続いて、イエズス会の学校で創作、上演されたラテン語演劇を対象として取り上げ、教育目的とキリスト教主題との関わりを調査することでその独自性を明らかにすることを目指し、同一の主題を取り上げた世俗のフランス演劇との比較検討を通して共通項と差異を示すことを目的とした。具体的には、17世紀のラ・フレーシュ学院で修辞学教師を務めたイエズス会神父ニコラ・コーサンの悲劇作品において、聖書や殉教に関する主題が、世界劇場の視点からどのように脚色、劇化されているかという問題を設定し、とりわけレトリックの技法のひとつである「活写法」に着目することで、コーサンが可視的な世界の背後に位置する不可視の神によって統御された世界を示唆することで宗教的、道徳的、教育的目的を達成していることを論じた。以上のテーマに関する論文を一本執筆した。 また、コーサンの後を受けてラ・フレーシュ学院に修辞学教師として着任したルイ・セロの悲劇および弁論集を題材として、世俗の主題をキリスト教的観点から解釈するという課題を解決するために、セロが展開したドラマトゥルギーに関する研究を行った。具体的には、取り違えによる滑稽な劇作術を駆使したプラウトゥスの喜劇『アンフィトルオ』をキリスト教悲劇に翻案した『警告を受けたサポル』の分析を行った。さらにこの研究の補完として、演劇を批判するキリスト教の伝統と演劇を教育で活用するイエズス会教育との矛盾を解決するために、セロが展開した議論に関する研究を行った。 並行して今年度は、フランス古典主義悲劇に関する論文を二本公刊した。
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