2013 Fiscal Year Research-status Report
亡命ロシア文学の帰還とその受容-ディアスポラ・トラウマ・視覚文化
Project/Area Number |
25770126
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中野 幸男 東京大学, 人文社会系研究科, 研究員 (40640800)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 亡命文学 / ロシア文学 / トラウマ / シニャフスキー |
Research Abstract |
本年度は中国などへの招待講演が続いたため、当初の計画の後半で行う予定であったニューヨークでの資料調査を前倒しして行うことになった。8月4日から16日までニューヨークに滞在し、コロンビア大学バトラー図書館内のバフメテフ・アーカイヴズやニューヨーク公立図書館にて亡命文学関連の資料調査を行った。本年度は主に研究上のテーマであるトラウマに関連する発表として、2013年6月1日に日本ロシア文学会関東支部研究発表会にて博士論文に基づく「記憶と表象 -シニャフスキー/テルツにおける地下文学・収容所・亡命-」(日本語)の発表を行った。また、亡命文学を現代ロシア文学に位置づける試みとして、2013年7月24日に中国・威海の山東大学で行われた中国ロシア文学会で招待講演「ボリスグレープ同盟とタミズダート」(ロシア語)という発表を行った。トラウマに関連して、2013年11月2日の日本ロシア文学会研究発表会でも「シニャフスキーとトラウマ」(日本語)という発表を行っている。2013年11月22日にはアメリカ・ボストンで開かれたスラヴ東欧ユーラシア協会年次総会にて「ソヴィエト市民としての異星人:アンドレイ・シニャフスキー『プヘンツ』における疎外の表象」(英語)の発表を行った。2013年12月7日には中国・上海で行われたモダニズム文学国際学会に招待され、アメリカでの亡命文学資料調査に基づく発表「ニコライ・グミリョフとグレープ・ストルーヴェ」(英語)を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度はアメリカ滞在時のネットワークがアジア方面で作用し、2回の中国での発表(威海、上海)はいずれもアメリカ滞在時、及びその中国内のネットワーキングの成果とも言える。主に、世界の多言語・多文化状況における亡命文学を研究するにあたって、様々な地域の人間が集まる場所で、しかもこれまでの研究とは異なり中国や他のアジア諸国の研究者と知り合えたことは有益であった。研究上のテーマであるトラウマ・ディアスポラ・視覚文化のうち、トラウマについては進展が見られた。ソ連収容所経験を持つ作家・画家を対象とした発表を行い、国内の二回の口頭発表はいずれもトラウマに関連するものである。また、ニューヨークやボストンなどで亡命ロシア文学についての知見を国外の研究者から得ることができたことは、亡命文学とディアスポラ文学というテーマを深めることに大いに寄与した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は研究計画に従いながら、年末のアメリカ・サンアントニオで開かれるスラヴ東欧ユーラシア協会年次総会への参加と、ロシア国内でのシンポジウム参加を予定している。また、国外研究に関してはボストン大学に新たに亡命研究者のアーカイヴ資料が保管されていることが国外の研究者からの情報で判明したため、夏季にボストンでの短期調査を考えている。この調査対象のマルク・スローニムに関する論文は英語で発表する予定である。また研究計画テーマのうち、ディアスポラに関しては昨年末から研究を進めているものを今年度中に英語あるいは日本語で発表する。日本においては日本ロシア文学会などを発表の場として念頭に置いている。今年度は北海道大学スラヴ研究センターの公募事業「スラヴ・ユーラシア(旧ソ連・東欧)地域の総合的研究」(個人)の申請も通っているので、本年度は主に海外からの来客による研究会を中心とした機会にセンターを利用したい。また、研究成果の発表機会としても念頭に置いている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度分は700000円を請求していたが、6月の中国・威海での学会参加、8月のニューヨークでの資料調査を終えた時点で、本年度分はなくなりかけていた。また、11月にボストンと上海での学会参加を予定していたために 更に700000円の前倒し請求をしている。そのため、旅費の98.3%に当たる1080820円を旅費として使い、残額を書籍購入等の費用に充てていた。本年度は30143円の残額が生じたが、翌年度の物品購入費に充てられる。 翌年度分として1000000円を請求している。本年度の残額30143円と合わせて、旅費・物品費に充てられる。本年度は予定では夏季にボストンでの短期調査、ロシアでの学会参加、年末にサンアントニオでの学会参加を予定している。そのため、大部分が旅費として使われることになる。昨年度同様に、残額は書籍等の物品購入費に充てられる。
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