2016 Fiscal Year Annual Research Report
The references to classical works in Proust's novel
Project/Area Number |
25770127
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
松原 陽子 九州産業大学, 国際文化学部, 准教授 (10610371)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 小説 / 演劇 / 生成過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究期間全体を通して、フランスの古典主義演劇という主題をめぐって小説家プルーストがいかなる手法を用いているのかという課題に取り組み、プルーストの作品の独自性を明らかにすることを目的として研究を進めた。テクストの生成過程を分析し、最終稿までの変更点を確認することで、作家の手法が見えてくることが多く、綿密な資料調査が不可欠であった。最終年度は校務により、出張が認められなかった期間があり、コメンテーターとして参加予定だった研究会に参加できなかっただけでなく、資料調査が十分に行えないことがあった。今後も、草稿を含めた資料調査が必要である。 国際シンポジウム「ジャンルの混淆1913-1914」では、プルーストの小説における古典主義演劇について発表し、発表内容を論文として公表した。具体的には、『フェードル』をめぐって、プルーストが用いた手法と19世紀から20世紀の作家の手法を比較し、プルーストの手法の独自性を浮かび上がらせた。 また、小説『失われた時を求めて』において主要な登場人物であるアルベルチーヌと古典主義演劇の引用との関連を主な分析対象として、複数の論文を公表した。『失われた時を求めて』の中でも『花咲く乙女たちのかげに』、『ソドムとゴモラ』、『囚われの女』と『逃げ去る女』のテクストを中心に、草稿を含め、『失われた時を求めて』におけるアルベルチーヌのイメージの変遷を追い、それが小説の結構とどのように関連するのかという問題を考察した。最終年度は『花咲く乙女たちのかげに』を中心にテクストの生成過程を辿りながら、バルベックの浜辺で出会ったアルベルチーヌと少女たちが「私」にとっていかなるイメージの存在に変貌していくのかを考察した。 最終年度も、本研究課題に関する専門家である複数の研究者に講演を依頼し、講演会を主催した。講演会は、本研究課題を進める上で、意見交換をする貴重な機会となった。
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