2014 Fiscal Year Research-status Report
第二次大戦下のパリ・シュルレアリスム:「ペンを持つ手」グループがひらく新たな展望
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25770128
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
進藤 久乃 学習院大学, 付置研究所, 研究員 (40613922)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ペンを持つ手 / シュルレアリスム / 第二次世界大戦 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、前年度に収集した第二次世界大戦下のシュルレアリスムグループ、「ペンを持つ手」の資料の分析に時間を割いた。「ペンを持つ手」グループを牽引したジャン=フランソワ・シャブランとノエル・アルノーのテクストを読解し、グループの基本的な方向性を確認した上で、発行された機関誌の数々を分析しながら、ナチスドイツ占領下という極限の状態における集団的活動のあり方に注目し作業を進めた。 しかし「ペンを持つ手」グループの射程を明らかにするためには、その活動自体を分析し、同時代のレジスタンスと比較するのみならず、戦後フランスの文学シーンについても研究を進めることが必要不可欠であることが明らかになった。他の作家たちが第二次大戦中にどのような態度をとり、そのために戦後どのような評価を下されたのかという点は、非常に複雑な多くの問題を含むもので、整理するために当初の予定よりも多くの時間を要している。この点について、時代による言説の傾向の変化も含めてより詳細に調査を進め、グループのメンバーたちの戦後の動向を確認した上で、「ペンを持つ手」を文学史の中に位置づけることが必要であることを認識した。 なお、2014年はパリがナチスドイツから解放されて70周年にあたるため、それを記念してパリの各所で開催された企画展を見学し、資料(企画展のカタログやレジスタンス関連書籍)を収集した。対独レジスタンスに関する現在の研究動向を知るために、非常に有益であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の主題である「ペンを持つ手」グループ自体については、資料の収集及び分析が順調に進んだ。 しかし、これらの分析を結論づけ、「ペンを持つ手」をシュルレアリスム史、文学史の中に位置づけるためには、第二次世界大戦後の文学状況について、最新の研究を踏まえながら精査する必要が生じた。 それに加え、当初2015年2月~3月に予定していた、機関誌の現物の閲覧などを目的とする最終的な資料調査を延期することになったため、当初2年の予定であった研究計画を一年間延長することになった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、第二次世界大戦後の文学・芸術動向を踏まえた上で、「ペンを持つ手グループ」の活動をシュルレアリスム史・文学史的に位置づける。具体的には、第二次世界大戦中のレジスタンス、その成果を汲み取りながら大戦後の文学シーンの主導権を握ることに成功したジャン=ポール・サルトル、それに抗った作家たちなどについて整理した上で、「ペンを持つ手」及びシュルレアリスムの位置付けを再考する。研究成果は、国内外の学会にて発表する。
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Causes of Carryover |
2015年1月~3月の間に予定していた出張を、現地の安全状況などを鑑み延期したため。 また、研究を結論づけ、成果を発表するためには、当初予定していた研究計画以外の要素について詳細に調査する必要が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
第二次世界大戦とフランス文学に関する最新の研究書を収集・購入するための印刷費と消耗図書費にあてる予定である。 現地でしか閲覧できない資料がある場合には、研究を完成させるための出張旅費にあてる。また、海外の学会で発表する機会が得られた場合には、研究成果を発表するための出張旅費に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)