2013 Fiscal Year Research-status Report
17世紀以降の日中における『詩経』図解の展開に関する研究
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25770137
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
原田 信 早稲田大学, 文学学術院, 助手 (00633447)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 中国における図解本の調査 / 日本における図解本の調査 / 『詩経』図解本の変遷過程の解明 / 国際学会発表 / 論文発表 |
Research Abstract |
平成25年度は、17世紀以降の日中の『詩経』図解本の継承関係、編纂状況の総体的な状況を把握するべく、関係資料の調査および分析を同時に行った。 調査の面では、中国の復旦大学図書館や南京図書館、日本の静嘉堂文庫や足利学校図書館等の蔵書を対象として、元代から中華民国までの『詩経』図解を調査した。特に復旦大学では、明・清の科挙学習の参考書に附された図解を複数発見した。また、足利学校所蔵の元版『詩集伝』図解に同時期の他の図解より多くがあること、静嘉堂文庫所蔵の明版『詩経疏義会通』や公文書館所蔵の明版『詩集伝』に『詩経大全』の図解が附されていることが明らかとなった。これらは、明代以降の『詩経』図解の継承や伝播を明らかにする上で重要な発見であった。このほか、明の胡明勗『詩経集成図説』が明代の他の図解とは全く異なり、『詩経』中の名物ではなく、詩の内容解釈を図示する形式の図解であることを確認した。 さらに、日本人編纂の図解である細井東陽『詩経名物図解』、田邊楽斎『詩経図解』、尾田玄古『五経図解』などについても調査を行った。これらの図解はいずれも中国の『詩経』図解とは異なる考証を行なっており、日本における『詩経』名物考証の独自の発展経過を解明するうえで、注目すべき資料である。今後他の資料と合わせて分析をすすめる。 分析の面では、17世紀以降最も広く流布し、参照された勅撰の『詩経』図解である、明の「詩経大全図」と、これを改訂した清の「詩伝図」を取り上げ、両図解の編纂背景と異同、および他の『詩経』図解との関わりを考察した。この結果、勅撰『詩経』図解は朱熹の『詩経』解釈を主としたが、清代にかけて朱熹の影響が次第に薄らぎ唐代以前の注釈が多く収録されるようになること、そして、この二つの勅撰図解が『詩経』名物解釈の標準となったことで、これらとは異なる図解が編纂されるようになったことを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年度の実施計画では、現存する『詩経』図解のうち最も古い南宋「毛詩正変指南図」以来の図解の継承関係とともに、これとは異なる形式をもつ図解を調査し、分析する予定であった。 調査の面では、上記「研究実績の概要」に記したように、これまで未見の図解を複数調査することができたため概ね順調であったが、分析の面では「異なる形式をもつ図解」を分析するまでに至らなかった。 この原因は、平成25年度の調査を通じて南宋「毛詩正変指南図」の内容を継承している図解が複数発見されたこと、そして、これらの図解を整理し、さらに「異なる形式をもつ図解」を考察する上で、まずは明・清の当時、最も広く流通し、最も標準的な図解であったと推測される勅撰図解の内容を分析することが必要となったからである。 そこで、平成25年度は明の「詩経大全図」と清の「詩伝図」を対象とした分析を進めたのだが、両図解はその内容、特に注釈の面での異同が多く、詳細な比較を行うのに多くの時間を費やしたため、「異なる形式をもつ図解」の分析を行うことができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、すでに分析を進めるのに必要な資料のうち、中国のものについては概ね調査することができた。また、二つの勅撰図解の分析を終えたことで、清代以後に多く編纂される、南宋「毛詩正変指南図」とは異なった形式の図解を分析する準備は整ったと考えられる。 平成26年度は、まだ調査を行なっていない台湾および関西の蔵書機関に所蔵されている図解を調査する。また、平成25年度の調査で得られた資料をもとに、明・清以後の南宋「毛詩正変指南図」とは異なる形式の『詩経』図解、および日本における『詩経』図解の内容の分析を行い、両国の18世紀以降の図解編纂の総体的な流れと特徴を明らかにし、日中の『詩経』図解の間に存在する異同とその背景について比較検討をすすめる。
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Research Products
(2 results)