2014 Fiscal Year Research-status Report
韓国語テンス・アスペクトの第一言語習得過程及び習得データのコーパス構築
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25770140
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
柳 朱燕 東北大学, 国際文化研究科, 研究員 (40647682)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 韓国語のテンス・アスペクト / 第一言語習得研究 / 言語習得資料のコーパス構築 / アスペクト仮説 / インプットの影響 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「韓国語のテンス・アスペクトの第一言語習得過程」を明らかにすることと共に、「韓国語の言語習得データをコーパス化する」ことを目的としている。 言語習得研究において、テンス・アスペクトの習得は動詞の内在アスペクト(inherent aspect)と強い相互作用があることが広く知られている(アスペクト仮説 (the Aspect Hypothesis), Andersen & Shirai, 1994)。「アスペクト仮説」では、学習者又は幼児は過去形態素の使用を「到達動詞」、「達成動詞」から「活動動詞」、「状態動詞」へ、そして、進行形態素の使用を「活動動詞」、「達成動詞」、「到達動詞」へと発展させていくと主張している。本研究では、韓国語の過去形「-ess-」と進行相の「-ko iss-」を対象とし、第一言語における習得過程を分析にした。研究の結果、韓国語の過去形「-ess-」に関しては、韓国語の第一言語習得過程でも「アスペクト仮説」に従う結果が得られた。この原因として、本研究では養育者の発話を分析し、子どもの過去形使用パターンと養育者の使用パターンの間に強い相関関係があることが明らかになった。言語習得においてインプットの影響が重要な役割をはたすことが本研究の結果から示唆される。一方、韓国語の進行相「-ko iss-」に関しては、「アスペクト仮説」に従うと言いにくい結果が得られた。研究対象である3人の子どもの内、一人はアスペクト仮説に従い、二人はアスペクト仮説に従わない結果が得られた。その原因に関しては、養育者のインプットの影響、言語習得過程での個人差、韓国語の未完了アスペクト体系の複雑さが挙げられる。 韓国語の言語習得データのコーパス化については、CHILDES(Child Language Data Exchange System)にアップロードできるファイルの形式に全てのファイルを転換し、CHILDES に送っている。言語データの形態素分析についてCHILDES の責任者と論議を続けている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である「韓国語のテンス・アスペクトの第一言語習得過程の究明」はおおむね達成している。今年度、交付申請書に書いていた研究計画のとおり、「韓国語のテンス・アスペクトの習得」にあたる過去形態素と進行形態素の習得過程を両方明らかにした。また、養育者のインプットについても分析を行い、幼児の言語習得に大きいな影響を及ぼすことを明らかにし、研究発表を行ってきた。「韓国語の言語習得データのコーパス化」に関しては、CHILDESの責任者であるBrian MacWhinney 教授(アメリカCarnegie Mellon University)と面談を行い、幼児言語データのアップロードについて助言を頂いている。今年度はすべての幼児言語データを、コーパスの分析プログラムであるCLANで利用できるようにファイルの形式をチャットファイル(CHAT)に変える作業を行ってきた。現在、CHILDESにアップロード可能なデータをすでに送っていて、もうすぐ公開される見こみである。しかし、まだTag付け(形態素分析)に関しては議論中であり、いくつかの形態素分析機の中でどれを使うべきか検討しなければならない。韓国語の幼児言語コーパス構築の準備は研究計画書通り着々進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度行われた「韓国語のテンス・アスペクトの第一言語習得過程」の研究は第一言語習得分野で世界的に権威がある学会IASCL(International Association for the Study of Child Language)で発表をしており、著名な学者からコメントをもらっている。今度「韓国語のテンス・アスペクトの第一言語習得過程」を主題にした論文を執筆し、国際ジャーナルに投稿する計画である。また、「韓国語の言語習得データのコーパス化」に関して今年度は、韓国語の第一言語習得データをCHILDESにアップロードする作業を行った。これから言語データの形態素分析(Tag付け)について研究を進んでいく計画である。幾つかの韓国語の形態素分析機があるが、CHILDESで運営している形態素分析プログラムであるCLANとの相互交換可能性を考慮して選択しなければならない。韓国語の幼児言語コーパスを提供することによって、言語学や心理学、教育学の様々な分野に利用されることが期待され、今後様々な分野の研究展開に寄与できると考える。
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Causes of Carryover |
次年度使用額127円は、物品費で使う予定だったが、金額がとても少ないため来年度に繰り越しすることにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度に物品費として使う予定である。
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