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2014 Fiscal Year Research-status Report

印欧語族イタリック語派に観察される音韻変化の内的要因の研究

Research Project

Project/Area Number 25770147
Research InstitutionKyoto University

Principal Investigator

西村 周浩  京都大学, 白眉センター, 特定助教 (50609807)

Project Period (FY) 2013-04-01 – 2017-03-31
Keywordselision / prosodic hiatus / strages / stragulum / 類推 / Numa
Outline of Annual Research Achievements

長い伝統をもつ言語の歴史を紐解くと、多種多様な音韻変化に直面する。印欧語族イタリック語派に属するラテン語がその好例である。具体例が豊富で経験的に生起条件がすぐに分かる変化もあれば、データが限定的であったり込み入ったプロセスを示したりする場合、十分な説明が行われないままほとんど放置されてしまうということもある。本研究の目標は、たとえデータに限りがあっても、多角的な分析を施すことで、音韻変化の背後にある要因を明らかにすることである。
ローマの喜劇作品に用いられた韻律はラテン語の言語学的特徴に支えられていることが多い。特に注目したのが、母音終わりの語に母音始まりの語が続く場合、前者の母音を脱落させるかのように読む手法(いわゆるelision)と、逆にその母音を維持し、後に続く母音との間に切れ目(いわゆるprosodic hiatus)を置く読み方とがある。どのような場合にどちらが選択されやすいのかという条件についてこれまで分析を行ってきたが、昨年度その結論を論文の形にまとめることができた。
語中に突発的に音が挿入される場合もある。ラテン語のstragulum‘blanket’やstrages‘destruction’などの語に見られるgという子音は、サンスクリット語などとの比較から元々存在しなかったことが分かっている。では、なぜ子音が挿入されたのか。私は問題となっている子音の直前にある長母音aに注目し、agという配列がラテン語において様々な要因で生起しやすいことから、これとの類推により上記の語がgの音を獲得したと主張した。その内容は論文として近々出版予定である。
また、古代ローマの2代目王の名前として知られるNumaに関して、uが元々oであったと主張。これにより、この人名に妥当性の高い語源をもたらすことが可能となった。その内容は学会で口頭発表し、一定の評価を得ることができた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

「研究実績の概要」で説明した通り、ラテン語のデータを新たな視点から見直すことでラテン語の音韻論的な諸特徴が明らかとなり、またその特徴が一見不規則な通時的変化の要因にもなりうることが示された。複数のトピックに関してその研究成果を論文の形に結実させることができた点で昨年度の研究状況には満足している。上述のstragulum / stragesに関する考察については一昨年度の研究がベースとなっており、プロジェクトとしての連続性も維持することができている。新たに着手した人名Numaを扱う研究に関しても、学会で口頭発表を行い、さらなる分析に向けて良いスタートを切ることができた。このトピックはラテン語の音韻史のみならず、問題となる人名が古代ローマ世界でもちえた意味の考察にも役立つ可能性が高く、計画以上の成果が見込まれる。
その一方で、選択した個々のトピックから導き出された(る)音韻論上の結論は、その適用の範囲が当該のデータ、すなわち問題となる語彙あるいは特定の音連続に収束する傾向があり、言語全体にわたって汎用性があるとは必ずしも言えない。今年度は、ラテン語音韻史を考える上で必須となるようなテーマに挑戦し、巨視的な観点から研究に取り組む必要性を感じている。

Strategy for Future Research Activity

まず人名Numaを扱った研究をさらに進展させ、その内容を論文としてまとめることが最重要課題であると言える。uが元々oであったとする主張の裏付けを関連性の深いデータをより詳細に分析することで得るつもりである。
また、本プロジェクトの中心課題の一つであるわたり音のイタリック語派における歴史的振る舞いに関して、昨年度、サベル諸語の一つであるオスク語の最上級形式maimas‘largest, larger’の再考を進めた。2005年に出版した論文では、この形式の形態論的構造を歴史的な立場から考察し、本来の語根*mag-に含まれる*gがある条件で*yに変化したと主張。その*yがさらにどのように変化したのか、オスク語資料でわたり音がどのように表記されうるのか詳細な研究を行うことで、解明を目指した。論文としての仕上がりが近づいているので、最後の詰めを行いたい。
イタリック語派において無アクセントによって引き起こされる母音脱落についても、昨年度さらに研究を積み重ねた。具体例の検証は概ね終了している。論文に近い形になればと思う。
最後に、「現在までの達成度」の後半でも述べたように、言語史全体に大きな影響を及ぼし得るような研究に着手するつもりである。トピックとしては、ラテン語の複合語に観察される母音の弱化現象を扱う予定である。複合語はたいてい前部要素と後部要素の二つに分かれるが、後部要素の方に母音の弱化が見られる場合とそうでない場合とがある。こうした別々の音韻論的扱いをアクセント付与規則という大きな問題と関連づけながら考察を行うつもりである。

  • Research Products

    (4 results)

All 2015 2014

All Journal Article (2 results) Presentation (2 results)

  • [Journal Article] Elision and Prosodic Hiatus between Monosyllabic Words in Plautus and Terence (tentative)2015

    • Author(s)
      Kanehiro Nishimura
    • Journal Title

      To appear in a Festschrift

      Volume: 該当なし Pages: 未定

  • [Journal Article] On Latin stragulum and strages: -g- and Analogy2015

    • Author(s)
      Kanehiro Nishimura
    • Journal Title

      To appear in a Festschrift

      Volume: 該当なし Pages: 未定

  • [Presentation] The Roman king as an Indo-European distributer2014

    • Author(s)
      Kanehiro Nishimura
    • Organizer
      26th Annual UCLA Indo-European Conference
    • Place of Presentation
      UCLA
    • Year and Date
      2014-10-25
  • [Presentation] A linguistic approach to Lucretius’ prayer to Venus: Mars and poetic tradition2014

    • Author(s)
      Kanehiro Nishimura
    • Organizer
      14th Congress of the International Federation of the Societies of Classical Studies (FIEC)
    • Place of Presentation
      Bordeux
    • Year and Date
      2014-08-26

URL: 

Published: 2016-06-01  

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