2014 Fiscal Year Research-status Report
ケセン語のヴォイス・アスペクトに関する理論言語学的研究
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25770156
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Research Institution | Morioka College |
Principal Investigator |
新沼 史和 盛岡大学, 栄養学部, 准教授 (40369814)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ケセン語 / 統語論 / 形態論 / サル表現 / 反使役 / 脱使役 / 自発表現 / 可能表現 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度、私は、平成26年6月法政大学で行われた第148回日本言語学会において、Anticausatives and Ar-intransitives in kesenという発表を行った。この発表は、ケセン語のar自動詞が、ある種のヴォイス現象である、ということを論じた。また、同じく6月に日本国立国語研究所で開催されたFormal Analysis of Japanese Linguistics 7において、Ar-intransitives as a complex verb in Japaneseというポスター発表を岩手県立大学の高橋英也先生と行った。この発表では、日本語のar自動詞のarの部分が動詞から文法化によってヴォイスを表す主要部へと変化したのではないか、という仮説を検証した。 9月には、札幌学院大学において、「自動詞の通言語的研究」という研究会において、「ケセン語のサル表現とar自動詞について」また、10月には、九州大学において、Intransitiving Morphology in Japanese Dialectsというワークショップが開催され、Anticausativization and Ar-intransitives in Kesenという発表を行った。ここでは、ar自動詞と、もう一つのヴォイス現象である、いわゆるサル表現との類似点、相違点を明らかにした。 11月には、学習院大学で開催された第32回日本英語学会において、「可能を表すar自動詞と接尾辞arの形態統語的役割について」という発表を行い、可能を表すar自動詞が、やはりヴォイス主要部であり、その役割と、可能を表す「られ」との類似性について指摘を行った。また、大阪大学で開催された第15回日本語文法学科において、「日本語における接尾辞arの文法化とHAVE/BE交替について」という発表を岩手県立大学の高橋英也先生と共著で行った。これは、6月にFAJL7で発表した内容の発展版である。 非常に多くの発表の機会を得ることができ、また、研究会、ワークショップ、学会を通して、多言語や他方言との類似性、相違点にも触れることができ、有意義な1年であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、海外で発表することはできなかったが、3回の学会発表、1回のポスター発表、そして、2回の研究会、ワークショップの発表を行うことができた。また、第148回日本言語学会大会予稿集に、発表の論文を掲載した。 これらの研究発表ならびに論文は、ケセン語のヴォイス・アスペクトに深く関わっている現象であり、本科研費の研究課題に沿うものである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、サル表現やar自動詞に関する論文を査読付きジャーナルに投稿し、公刊を目指す。 加えて、大船渡や陸前高田から来ている学生に協力を仰ぎながら、ケセン語のデータを広く収集していく。 また、「らがす」構文と呼ばれる、放任使役の一種と思われる現象についてはまだ手付かずであるので、そちらについての調査も行っていきたい。
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Research Products
(9 results)