2015 Fiscal Year Annual Research Report
ケセン語のヴォイス・アスペクトに関する理論言語学的研究
Project/Area Number |
25770156
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Research Institution | Morioka College |
Principal Investigator |
新沼 史和 盛岡大学, 文学部, 准教授 (40369814)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 統語論 / ケセン語 / ヴォイス / アスペクト / 自発 / 可能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、岩手県大船渡市や陸前高田市などで話されているケセン語のヴォイス・アスペクトに関する研究である。ケセン語は、理論言語学で全く検証されていない言語だけでなく、標準日本語では観察されないヴォイスやアスペクト表現がある。そこで、本研究では、①サル表現、②使役の-agasi、そして③可能表現に焦点を当て、これらの表現のメカニズムを理論的に説明をすることが本研究の目的である。 本研究の成果として、サル表現には、自発・可能・結果状態(到達)という3つの意味があるということ、そして、サル表現の本質は自発表現であり、上述の3つの意味が、Alexiadou (2012, 2014)などで提案されているMiddle Voiceという機能範疇を想定することで説明可能である、ということを明らかにした。 そして、本計画の目的には具体的に示さなかったが、形態素arがついた自動詞が、サル表現が表す3つの意味を持っているという点で、興味深い類似性を示していることが明らかになった。そこで、本研究では、ケセン語のarがついた自動詞の本質について詳細に検討し、やはり、形態素arが機能範疇Middle Voiceである、ということを論じ、標準日本語やその他の地域で話されている方言におけるar自動詞においても同様にMiddle Voiceとして分析できるのではないか、という可能性について言及した。 今後の研究の展望として、ar自動詞とサル表現との関係性について検討する必要がある。加えて、もしサル表現がヴォイスの一種であるとするならば、多くの研究がなされている受身や使役といったヴォイスとの関連性という問題も残されている。これらの課題に向けて、今後研究を進めていく。
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Research Products
(5 results)