2016 Fiscal Year Research-status Report
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25770160
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 命名 / 漢字 / 価値観 / 家族 / 名付け / 名前 / 社会言語学 / 子ども |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、主に後述の3つの活動に携わった。第一に、引き続きデータを収集しつつ、当年度までに得られたデータの分析を発展させた。第二に、名付けにおける変遷の社会的な背景を明らかにすべく、広報誌より名前の由来に関するデータを新しく収集するとともに、親に対し名付けの理由に関するインタビューの計画に努めた。第三に、これまで収集したデータを活用し、価値観をキーワードにし、名付けの理由等が現代社会の人間関係をいかに反映しているのかについて分析を進めた。 また、上記の活動の成果を、国際誌の2本を含めて4本の論文にまとめた。ことに、electronic journal of contemporary japanese studiesへの投稿論文では、他の社会現象との比較をしながら、メディアにおける取り上げ方に着目して新しい名前の社会的背景を鑑み、なぜ新しい名前が不評を受けるようになったのか、また今後の受容に関する考察を行った。また、Orientaliska Studierへの投稿論文では、広報誌のデータを活用し、12市町村の名付け傾向を比較して全国的に新しい類の名前が普及していることを確認した。その結果、地域差がないことが明らかにすることができ、全国レベルの傾向であることが改めて明確になった。 その他の論文では、広報誌から得られた名前の由来に関するデータを分析した結果に基づき、家族のだれが子どもの名付けに参与しているのか、また親子間・兄弟間の名前上の共通点を考察した。その結果として、現在、核家族が名付けの中心となっていること、また親子間の共通点よりも兄弟間の共通点の方が多いことが明らかになった。このことを踏まえ、現在の名付けは主に核家族の絆を深めるために機能している可能性を指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、計画の段階では、(ア)名前の読みにくさを確認し、(イ)その読みにくさの緩和が期待できるのかを明確にした上、(ウ)名付け傾向における変化が、より大きな社会的な現象といかなる関係にあるのかを明らかにすることを目的とした。その目的を果たすべく、4年間で(1)広報誌の出生欄から該当するデータを抽出し、近年の名付け傾向に関するデータを収集して、(2)実験的に類似した名前に対する接触経験に伴い、読みにくいとされている名前が読みやすくなるのかを検討した上、(3)名前の由来や名付けの過程について、親とのインタビューを実施することを予定していた。 現時点では、(1)の名付けにおける変化が十分に確認でき、特定の地域を超える現象であることが明らかになったため、名付け傾向の行方に関する理解を深めることに対し、十分に貢献ができた。しかし、(2)に関しては、実験では期待通りの結果が得られず、方法等の見直しが必要となった。また、(3)に関しては、特殊な調査であるがために協力者の確保が困難であった。上記の理由より、平成28年度は研究の方法の見直しを行い、ことに(2)に関しては今年度改めて実施する方向で動いているが、結果的に当初の予定よりも遅れており、1年間計画を延長することになったのである。また、(3)に関しては、再び協力者の確保に努めながら、名付けの理由や過程が考察できるように、その他のデータ源を開発し、分析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、後述の3点を中心に研究課題の進展に努める予定である。第一に、前年度に引き続き広報誌からのデータを抽出し、地域・性別・構造上の特徴という観点から新しい名前の分析をさらに進展させることを通し、近年の名前の傾向を明らかにすることを計画している。第二に、平成28年度中に行われた見直しに基づき、前期中に再び実験を実施することを計画している。第三に、名付けの理由・過程に関する理解を深めるために、新しいデータ源を開発しつつ、改めて名付けに関するインタビューを実施する予定である。さらに、上記の活動とは別に、最終年度であることも踏まえ、本研究課題で得られた結果を速やかにまとめ、総合的な観察ができるよう、分析に努める予定である。 新しい名前と名付け傾向に関する理解を深めることとともに、研究課題の成果をより幅広く公表できるよう、現在はこれまで得られた成果をまとめる活動にも集中している。計画としては、まずは(1)男性名と女性名が同様な変化を受けているのかを観察し、ジェンダーいう観点から名付けの変遷を観察するという論文を執筆する予定である。また、(2)近年の価値観の変遷との関係を究明し、その結果を論文として執筆する。最後に、(3)既視でない名前に出合うとき、名前を読むためにいかなるストラテジーがとられるのかの分析を論文としてまとめる予定である。予定として論文を3本投稿することを計画しており、準備を進めている。なお、(2)に関しては、すでに平成29年5月に投稿し、本報告の執筆時では査読待ちとなっている。
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Causes of Carryover |
研究課題がやや遅れており、見直しが必要となった。その結果として、計画当初予定していた出費も、今年度まで見送ることになった。ことに平成30年度に改めて実験・インタビューを改めて実施することに伴い、実験の実施に必要な印刷の用紙や、インタビューに必要な器具などの購入も、実態に合わせて先送りとなった。また、データ収集も改めて必要となる見込みであるが、それも再実施までとなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
データ入力等に必要なパソコン:Surface Pro 4 CR3-00014、約\133,000;データ入力のアルバイト:10時間×10カ月×\1,000=\100,000;分析に必要なソフト:SPSS、約\116,000;先行研究のレビューに必要な書籍:約60,000;インタビュー用の録音機:KENWOOD MGR-E8-R、約45,000;学会出張:米国ホノルル市にて開催予定のJapan Studies Associationへの参加(2018年1月4日~6日)→航空券約\125,000、宿泊費約\36,000(3泊)、学会参加費約\30,000
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