2013 Fiscal Year Research-status Report
屈折・派生形態論の融合のための分散形態論を用いた日本語の活用・語構成の研究
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25770171
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
田川 拓海 筑波大学, 人文社会系, 助教 (20634447)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 時制 / 不定形 / ル形・終止形 / 連用形 / 連用形名詞 / 動詞由来複合語 / 分散形態論 |
Research Abstract |
本研究の目的には大きく分けて、1) 日本語の動詞の<活用>と統語的性質、特に時制/定性(finiteness)との対応関係、と、2) 連用形名詞(例:泳ぎ)と動詞由来複合語(例:草刈り)を中心とする<語形成> に関する記述と分析がある。 1)についてはこれまで研究の無かった時間節を形成するシダイ節について、述語は連用形となるが統語的には時制を持つ可能性が高いことを示し、活用と時制のずれを考える上で新たな手がかりを提示した。これは同時に、これまで統語論の領域では取り上げられることの少なかった形式副詞が形成する従属節の研究が有用であることも示している。 2)については、まず連用形名詞について統語的に動詞からの派生を経ているものが確実に存在することを明らかにし、分散形態論を用いた統語的アプローチの精緻化が必要であることを示した。動詞由来複合語については、先行研究によって主張されてきた「内項を複合する動詞由来複合語には「する」が直接付かない」という一般化に対して、多様・多量の反例が存在することを新聞コーパスから採取したデータによって示した。 また、本研究の理論的基盤である分散形態論の整備も平行して行った。具体的には、異形態の有無や現れ方が統語的情報によって左右されるという色々な言語に見られる性質が日本語においても観察されることを、述語の動詞性を考える上で重要な要素である「する」とそれに関係する形態の分析を通して明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1) <活用>と統語的性質の関係については、これまで限られたタイプの従属節を対象にして行われてきた「活用と時制の有無のずれ」がその他の従属節にも見られることを連用形のケースで示したが、述語がル形(終止形)を取る場合については、比況のホド節およびカを用いた等位節について簡単な記述的整理を行ったが、理論的な統語分析には不十分である。原因としては時制(句)の有無をはかる統語的テストに何を用いれば良いか、という問題についての検討に予定より時間がかかったことが考えられる。2) 語形成については、記述と分析については計画通り順調に進んでいる。ただし、データ収集とその整理に割く時間およびその作業を分担する研究協力者の確保が難航したため、語例のデータベース構築についてはやや遅れ気味である。
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Strategy for Future Research Activity |
1) <活用>と統語的性質の関係については、当初の計画通りホド節、ヨウニスル節など形式副詞・形式名詞の形成する従属節の内部構造について時制の存在を中心に記述をすすめる。また、それに加え、選言的等位接続を形成するカ節も取り上げる。これまでの研究でカ節にも不定形(時制を持たないル形)と思われるものが存在し、等位接続される節の種類によって複数の統語構造を取り得ることがわかってきたからである。その様相を調べることにより、活用と時制の複雑な関係がより明らかになると期待される。2) 語形成については特に大きな変更はないが、初年度に明らかにした連用形名詞および動詞由来複合語の性質や振る舞いが、分散形態論を用いた統語的アプローチによって具体的にどのように分析されるのか、それぞれの統語構造と統語-形態の関係を結ぶ各種規則をそれぞれ明確に形式化することを最終目標とする。平行して、現在進行中の語形成に関するデータベース構築を引き続き進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度について、おおよそは計画通りであったが、応募していた国際会議に研究発表が通らなかったため、成果発表を目的として計上していた旅費の海外渡航分が消化できなかった。また、データベース作成のための計画・基盤作りに予定より時間がかかったため、実際に短期雇用を採用し作業を行ってもらう時間が大幅に少なくなり、その分人件費において未使用分が発生した。 物品費については、研究に必要な図書の購入を随時進める。また、データベース構築作業のためのストレージデバイスを購入する。さらに研究の成果発表を印刷物やwebで公開することを予定している。旅費については主に学会などにおける成果発表、それに伴うデータ収集・研究打ち合わせに使用する。すでに1件、台湾での国際学会での発表が決定している他、さらに1件の国際学会(イギリス)、1件の国内学会(京都)の発表へ応募中である。さらに、3件の国内学会(大阪、愛媛、北海道)への応募を予定している。人件費として、データベース構築のため短期雇用2名を予定している。
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Research Products
(7 results)